VRやARの導入で新たなショッピング体験を実現できるとすれば、それは「シミュレーション性の向上」と「空間を含めたショッピング体験」が可能になるためだ。
「シミュレーション性の向上」により、商品の特性を理解しやすくなる。例えば、家や車を没入型のビューで体感したり、ビーチやホテルをVRで訪問し旅先を決める際にも有効だ。また、家具の配置をVR空間でシミュレーションすることも可能だ。
「空間を含めたショッピング体験」では、オンラインショッピングでは得られない、店舗内を見て回る感覚が体験できる。店舗内のナビゲーションを優れた形で実現できれば、オンラインショッピングと比べて次のような利点がある。
・記憶の有効活用:人間の脳は多くの視空間認知を行っている。「あのスーパーでは牛乳は奥の左角の、パンの近くに置いてある」といった記憶をVRショッピングでは活用でき、より直観的な買い物体験を実現し、ショッピングにかかる時間を短縮できる。
・セレンディピティの活用:店舗で商品を探すという行為が魅力的なのは、そこにセレンディピティ(偶然の出会い)の要素があるからだ。レジ横に置いてあるキャンディーを衝動買いする、あるいは目についたCDをジャケ買いするといった従来のEコマースでは実現が難しい買い物体験をVRショッピングは可能にする。
現状では上記のようなVRショッピングはまだ勃興期にあると言える。しかし、不動産業界や旅行業界では、徐々に360度ビューの活用が始まっている。