米国の大手各社が主に欧米市場でのビジネスを展開する一方、中国市場ではインターネット検索最大手のバイドゥ(百度)が、家庭用ロボット「リトルフィッシュ(小魚在家)」を発売している。これはTモールジニーと競合するものだが、リトルフィッシュは価格478ドル(約5万4300円)のロボット。一方、アリババのスマートスピーカーは、正式発売の8月上旬までは73ドル(約8300円)という低価格で販売される。
今後はバイドゥも、ロボットではなくパーソナル音声アシスタントを発売する可能性が高いと見られている。また、ネットサービス大手のテンセント(騰訊控股)も音声認識機能付きのスピーカー端末を開発中であり、発売が近いとされている。通販サイトのJD.com(京東商城)は、すでにスマートスピーカーの「ディンドン(DingDong)」を市場に投入している。
こうした中で、アリババにとって最大の強みとなるのは、4億5000万人規模の顧客ベースだ。Tモールジニーは、アリババのプラットフォーム上でのより便利な買い物を実現するもの。これらの人たちが、同社のホームアシスタント機能を利用する可能性は高い。売上高の引き上げにもつながるだろう。
アマゾンのネット通販事業が「エコー」の発売から恩恵を受けたように、アリババのネット通販事業にも好影響が及ぼされると見込まれる。
「言語」と「価格」にも優位性
経済成長と1人当たり国民所得の増加、比較的若い国民の平均年齢から考えれば、中国のスマートスピーカーやパーソナルアシスタントの需要は向こう数年のうちに大幅に増加することが予想される。スマートスピーカー市場は2018年に、230億ドル規模に達するとの見方もある。
中国の消費者がアマゾンやグーグルなどの外国製品を購入することは可能だ。だが、アリババをはじめとする国産製品には、「エコー」などにはない中国語に関する専門的な知識と、複数の中国語の方言を理解する能力があり、それらが外国製品との差別化につながるはずだ。
言語の問題に関しては、特にバイドゥに強みがある。人工知能を搭載した音声認識機能を持つ「ディープスピーチ(Deep Speech)」は、優れた音声認識機能を持つ。アリババの製品が競争を勝ち抜くためには、バイドゥに追いつくためのテクノロジー向けの多額の投資が必要だと考えられる。
アリババが今後、中国以外の市場でスマートスピーカーを発売する計画があるかどうか、現在のところは不明だ。だが、同社はすでにその他の事業でアジア地域に進出している。それらの市場への投入もあり得るだろう。さらに、欧米などの市場でも、価格の安さで勝負することができるかもしれない。
市場の飛躍的な成長が予想されるなか、スマートスピーカーはそう遠くない将来、どの家庭にも欠かせない電子機器の一つになる可能性がある。