石炭を燃料に発電する火力発電所では、大量の二酸化炭素(CO2)が排出される。このCO2を逃さずに、電力に変えようと計画している化学エンジニアがいる。米電力会社「ネットパワー」の共同創業者、ロドニー・アラム(76)である。
アラムは70年代、勤務先の工業用ガス会社で、そのCO2を閉じ込める方法について研究していた。理由は2つ。まずは、チャレンジ精神を掻き立てられたこと。そして、CO2による地球温暖化を防ぐこと。
困難なため、「90年代に一度、断念した」と話すアラムだが、いま、「アラム・サイクル」として実ろうとしている。
一般的に、火力発電所では石炭や天然ガスなどの燃料を燃やし、そこで出た蒸気で蒸気タービンを回転させて電力を発生させる。その過程でCO2も排出される。
ところが、アラム・サイクルでは「蒸気」を使わない。排出された「二酸化炭素」そのものを使って、タービンを回すのである。加圧し、取り扱い可能な温度に熱した超臨界状態のCO2を再びタービンに戻して発電する、という“循環”を開発したのだ。
同技術は、ネットパワーが東芝とテキサス州ヒューストンで建設中の発電所で導入されることが決まっている。