ワークスアプリケーションズ(WAP)だ。96年に創業し、人工知能を搭載した大手企業向けERPパッケージソフト「HUE」(ヒュー)で知られ、アメリカ、中国、インド、シンガポールにも事業を拡大している。
創業者である牧野正幸CEOに1位の秘訣を尋ねると、答えは入り口にあった。
「採用の際に、『うちにはこういうタイプの人が向いています』と明確に伝えているからです。担当者には大前提として『嘘をつくな。ごまかすな』と言っています」
嘘とは何か?
「日本の企業の大半は、リクルーティングのときにリップサービスをします。こんな事業もあんな事業もやってます、と。しかし、入社してみると、やりたいと思っていた仕事は全体の1割で、関心のない部署に配属されることが多い。不満だけど、ブランド力がある大企業だから退職はしたくない。逆に言えば、ブランドの有無ではなく、自分にとってベストな環境があるということが働きがいの評価になっているのではないでしょうか」
社風に合わない人は入社しないため、会社と社員のミスマッチが起きないわけだ。
WAPは、「成長志向の強い人材しか向きません」と強調している。同社で行われていたインターンシップを覗くと、まさに成長志向の登竜門といっていい。
現在、海外も合わせて年間8万人がWAPのインターンシップに応募する。その中から2000〜3000人が選抜される。報奨金や住居が用意されて、20日間のプログラムを受けるのだが、参加していた東京理科大学の大学院生に話を聞くと、「レベルが高く、課題は難しいです。でも、優秀な人たちと出会えるし、この会社に入社しなくても、自分の思考力を高めるという点に関して、一度参加する価値はあります」と言う。「入社パス」を取得できれば、卒業後3年間はいつでも入社ができる。
WAPでは成長を高めるために複数の制度を用いている。なかでも社員のパフォーマンスを向上させたものとして、牧野は「フレックス」制度を挙げる。完全に自己管理型の働き方だ。
「デメリットは、パフォーマンスを強制できないこと。さぼる人はさぼる。そこは仕方がないのでコストとして吸収しています。ただ、全社集会では、『成長する気がなければ、この会社にいる意味はあまりないと思うよ』とは言っています」