同社は最新の決算発表で「2017年のテーマはコネクションだ」とした。これは引き続きWeChatが同社のビジネスの中核を担うことを示している。同アプリはわずか6年で世界有数のSNSプラットフォームに成長した。
WeChatは単なるメッセージアプリではなく、ニュースや商品の情報収集源にもなっている。さらにオンラインでもオフラインでもモバイル決済を利用してアイテムを購入することが可能で、モバイル広告やロイヤリティプログラムのサービスも好調だ。ほとんどの世界的ブランドがWeChatにアカウントを持っており、マーケティングや顧客サービスに利用するほか、店舗に足を運んでもらうための入り口として活用している。
オンラインとオフラインの両面でWeChatを活用しているのが百貨店だ。中国の大手百貨店で2017年1月にアリババが買収提案をした銀泰商業(インタイム・リテール)もWeChatの決済サービスを導入し、店舗での決済のほか、WeChatで注文した商品を近くの店舗で受け取れるサービスを展開している。
米シアトルにAI研究所を設置
そんな同社が次に進むのがAI(人工知能)の領域だ。テンセントは5月2日、米ワシントン州シアトルにAI研究所を設置すると発表した。元マイクロソフトの主席研究者Yu Dong(俞棟)を代表に据え、音声認識と自然言語処理を主に研究する。テンセントがAI研究所を設置するのは2016年の深セン市に次いで2か所目だ。
テンセントはAIをビジネスに取り入れる努力を加速させてはいるものの、参入は遅かった。中国のバイドゥはすでに画像認識や音声認識、自動運転車などを含むAI関連技術に莫大なリソースを投入している。バイドゥは2017年の家電見本市(CES)で、家庭用音声制御ロボット「Little Fish(小魚在家)」を発表した。
しかし、テンセントにはWeChat の8億8000万人の月間ユーザーが生成する会話データという大きな強みがあり、これにAIを組み合わせれば競合に対抗できる。WeChatにAIを導入することで一気にイノベーションを加速できるだろう。
中国のメッセージング分野ではWeChatが圧倒的覇者だ。そこにAIを取り入れることによって巨大な規模のO2O(Online to Offline)コマースを実現することができる。中国で成功したい企業にとって、WeChatのプラットフォームの利用は今後ますます重要になってくる。