有機EL超えの次世代ディスプレイに「iPodの生みの親」も出資

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米アイダホ州に本拠を置くスタートアップ、Rohinni(ロヒンニ)は、大きさ25ミクロンのマイクロLEDを導電材料の上に数千個敷き詰めた「光る紙」を2014年に開発した。

同社の共同創業者であるCody PetersonとAndy Huskaは投資家のNick Smootと共に、当時グーグル傘下のネストでCEOを務めていたトニー・ファデルにこの製品を売り込んだ。ファデルは興味を示したが、マイクロLEDをより精密に、規則正しく並べることを要求した。

「クレージーなテクノロジーだと思ったが、ビジネスとして成り立たせるには技術改良が必要だと感じた」とファデルは当時を振り返る。

Rohinniは、半年をかけて2-3ミクロンの精度で1秒当たり400個の極小ダイオードを並べることができるロボットを開発し、ファデルから出資を得ることに成功した。ファデルは、元アップルの幹部で、iPodとiPhoneの生みの親として知られる。2013年に設立されたRohinniは、これまでにエンジェル投資家から総額1500万ドルを調達しており、ファデルは大株主の一人だ。

彼は同社以外にも100社以上のスタートアップを支援している。現在はパリに在住だがRohinniのメンバーには毎日4-5通のメールやテキストメッセージを送るなど、密にコミュニケーションを取っている。ファデルは、Rohinniへの出資額については明らかにしていない。

ファデルは、 Rohinniの開発した光る紙が、有機ELの代替品としてテレビやスマホなど幅広い製品に使用することができると考えている。現在、有機EL業界は、サムスン、LG、シャープ、ジャパンディスプレイの4社が独占している。

iPhoneのようにLCDディスプレイを搭載しているスマホは、一般的にLEDをディスプレイの上下に配置してバックライトとして使用している。ところが、RohinniのマイクロLEDを使えば、ディスプレイの裏側に設置することができ、有機ELのように端末を薄くしたり、ベゼルレスデザインにすることが可能になる。しかも、Rohinniによると画面は有機ELの10倍も明るいという。しかし、何といっても最大のメリットは、巨額投資をして有機EL向けに新たなサプライチェーンを構築する必要がないことだ。
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編集=上田裕資

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