大麻に「脳の若返り効果」 英紙ガーディアンらが報道

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ドイツのボン大学とイスラエルのヘブライ大学の研究チームは、大麻の有効成分の一つ、THCの少量かつ定期的な摂取は、脳機能の経年的劣化を防ぐ働きがあることを突き止めた。

今回の研究結果は5月7日、生物医学ジャーナルの「Nature Medicine」のサイト上で公開された。論文では若いマウスはTHCの影響下でパフォーマンスが低下するが、成熟したマウスは逆にパフォーマンスを向上させ、THCを摂取しなかったマウスよりも好成績を挙げることが明かされた。

研究者らは若年層(生後2ヶ月)と成熟層(同1年)、老年層(同18ヶ月)の3種類のマウスを対象に実験を行い、1ヶ月間の間定期的にTHCを与えた。その後、マウスらは物体の認識能力や迷路からの脱出能力を測るタスクを与えられた。

人間の場合と同様に、若年層のマウスはTHCを摂取しない場合は高年齢のマウスより良い成績を挙げたが、THCの影響下では大きく成績を落とした。一方で成熟層と老年層のマウスらはTHCを摂取すると、飛躍的にパフォーマンスを向上させ、THCを摂取しない若いマウスに匹敵する結果を示す傾向が見られた。また、その影響は数週間に渡り継続した。英紙「ガーディアン」は「どの年齢層のマウスもTHCの影響で奇妙な行動をとることは無かった」と述べている。

今回の研究結果は、マウスでも人間でも年をとるにつれて劣化する脳の内在性カンナビノイドへの刺激が、脳の活性化を促すという研究者らの仮設を裏付けるものになった。「少量のTHCの摂取は、成熟層や老年層の動物の認知能力を深いレベルで長期間に渡り改善することが分かった」と研究者らは述べている。

研究チームは今年後半には、THCが人間の高齢者の脳に与える影響の臨床試験を予定している。ドイツのボン大学とマインツ大学による以前の研究でも同様に、脳の主要な大麻の受容体と神経経路は、高齢者の脳機能の健全性に密接な関係を持つことが判明しており、そこへの刺激は脳細胞の変性を食い止める効果があるとされていた。

ガーディアンの取材に対し論文の共同執筆者のAndras Bilkei-Gorzoは「脳を若返らせることが出来れば、5年から10年の間、特別なケアの必要が無くなる。我々が期待していた以上の効果が見られた」と述べた。

編集=上田裕資

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