「4年前に開発を始めたきっかけは映画『スタートレック』に登場したコンピューターだった」と、自然言語応答サービス「アレクサ・ボイス・サービス(Alexa Voice Services)、AVS」事業のバイスプレジデントのSteve Rabuchinは語る。「人々の暮らしを様々な面でサポートし、情報を提供するクラウド上の自然言語応答サービスがあったら面白いのではないかと考えた」
そのアレクサの技術が開発キットとして外部のハードウェア開発企業に公開されることになった。今回のキットはエコーの機能をパッケージ化したリファレンスデザインで、エコーと同様の7つのマイクアレイが搭載され、「アレクサ」と呼びかけると反応したり、音声認識アルゴリズムが利用できる。
このキットが利用できるのは公式サイト(Amazon Alexa 7-Mic Far-Field Dev Kit)から申請し、招待されたパートナー限定だが、料金は発生しない。AVSのディレクターのPriya Abaniは「利益を上げるためではなく、デバイスメーカーがより簡単に自然言語応答サービスを導入できるようにするための取り組みだ」と言う。
アマゾンが公開に踏み切ったのには、人々の生活にアレクサを浸透させようとする狙いがある。アレクサを通じてアクセスできるストリーミングや、通販などアマゾンプライムのサービスを通じて発生する利益を期待しているという。
アマゾンは過去にも他社にアレクサを使ってもらうための取り組みを行ってきた。例えば半導体企業コネクサントと協力し、2つのマイクを搭載したアレクサ対応のデバイスの開発を後押ししたこともある。だが、今回提供されるサービスによって、より高度な音声認識機能を搭載したデバイスの生産が可能になる。
アレクサが外部のハードウェア開発者に開放されたのは2015年6月で、翌年1月のCESで同社は「既に40社以上の外部パートナーと契約を締結した」と述べていた。
エコーが発売されたのは2014年のことだった。アレクサによってできること(アマゾンは“スキル”と呼んでいる)は今でも毎週増えている。調査会社Consumer Intelligence Research Partnersによると、エコーはこれまで820万台が販売されている。2016年にはグーグルがアマゾンに追随する形で音声認識スピーカー「Google Home」を発売している。