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アメリカン大学フェロー、調査報道NPO「iAsia」編集長

米国の大学で配られている「注意書き」

全米の大学で配られ始めた1枚の紙きれが人々に衝撃を与えている。青色の細長い紙に、びっしりと文字が書かれている。そこには、少し大きく次のように書いてある。

「警察、入国管理官、FBIに呼び止められたらどうするか」

これは、外国人の留学生や教員に対して、捜査機関から職務質問などを受けた際にどう対応するかを記した注意書きだ。作成したのは、米国で人権問題に取り組む弁護士などのグループ「ACLU」。今、全米各地の大学で配られている。

これが、事実上のイスラム教徒入国制限となっているトランプ大統領の発した大統領令に対する対応であることは一目瞭然だ。

この大統領令は、連邦裁判所の判断で一時的に効力が停止された状態となっているが、いつ復活するかわからず、全米の大学では、外国人学生や教員にこの注意書きの配布し始めているのだ。そこには、捜査機関から職務質問をされても、冷静さを失わずに、口論をしたり、走ったりしてはいけないなどと書かれ、その衝撃の大きさを物語るものとなっている。

例えば、FBIから接触が有った場合には次の様に書いてある。

「あなたは何も答える必要がない。そして、弁護士に連絡を取る旨、伝えなさい。FBIが質問したいと言っても、答えたくなければあなたには答える義務はない。もし答えることに同意した場合でも必ず弁護士の同席を主張すること・・・」。

「仮に逮捕された場合、それが不当な逮捕であっても、抗ってはいけない。そして、黙秘権を主張して弁護士を待ちなさい。あなたは、電話をかける権利があり、弁護士との会話を捜査機関は聞くことはできない・・・」

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「注意書き」の裏面。FBIについて書かれている

トランプ大統領がイスラム教を主要な教義とする7か国からの移民、難民の入国を禁止した大統領令を発したのは1月27日。その後、各地の空港で混乱が生じたことは既に報じられた通りだ。その後、ワシントン州政府の司法長官が連邦地裁に大統領令の無効を求めて提訴。連邦地裁のジェームズ・ロバート判事がそれを認めたため、現在は入国制限が一時的に停止された状態だ。

ただトランプ政権が控訴したため、控訴審の判断によってはいつまた入国禁止が復活するかわからない。また、状況次第では制限対象が7か国より増えるとの観測もある。注意書きを配布せざるを得ない状況が続いているということだろう。

注意書きを配った大学の一つ、首都ワシントンにあるアメリカン大学は筆者が客員として滞在している大学だ。ここは特に、国際関係の大学院が有名で、中東やアジアから多くの学生が来ている。最新式の建物もアラブ首長国連邦の王族の寄付でできている。

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そこで外国から来た学生に話を聞いた。制限対象となっているシリアから来た女学生だ。

「自由を求めてこの国に来て、自由を信じてまっとうに生きている私たちに対する侮辱です。悲しい。なぜ私たちは犯罪者扱いされなければいけないのか。この措置によって、アメリカに既に来ている私たちまで犯罪者扱いされてしまうのは悲しい」

サウジアラビアから来た女子学生は次の様に話した。

「不安です。注意書きをもらうのは有難いが、逆に、恐ろしさが増している。今はサウジアラビアが制限の対象に入っていないが、既に制限対象にしろという議論も出ています。何が起きても驚かない」

2人とも写真も名前の公表も拒んだ。そこに、彼女たちの置かれた状況の深刻さを見た。

注意書きを配ったゲイル・ハンソン副学長に理由をきいた。

「我々としては外国から来ている学生や教員を守る必要がある。ただ、現状、我々にできることは限られており、まずその対処の仕方を周知する必要があると考えた」

こんなことは過去にあったのか?

「911の時にあった。我々の大学には多くのイスラム教徒の学生がいるが、あの時、アメリカ中がイスラム教徒を不信感で見ており、警察による監視などが行われた。その時にも同じような措置をとっている」

こうした事態をどう思うか?

「私は大学の副学長という立場であり、個人的なコメントは慎みたい・・・」

しかし・・・と言葉を挟もうとすると。

「しかし、この状態が異常であることは言うまでも有りません」

そう言って深いため息をついた。その表情に全米を覆いつくしているものを感じた。

文=立岩陽一郎

 

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