だが、大門は違った。業務体制を見直し、変えたのだ。まずは悩みのタネだったデスクのシフト。人を増やせないならと、急なシフト変更時には、ベテラン記者にデスクを担当してもらう「パートタイム・デスク」制度を導入した。
前代未聞のことだったが、大量の原稿を読むデスクの仕事は、記者たちの学びの場にもなり、皆、デスクの仕事を厭わず引き受けてくれた。ひとりが倒れたら、紙面が成立しなくなるという危うさも消えた。
結局、大門が機転を利かせつくった体制からは、男女ともが恩恵を受けた。「そんな高尚なものではなく、ただ、人の手を借りざるを得なかっただけ」と謙遜するが、この制度により多くの女性が「ママデスク」として大門に続くことになる。
これが、紙面の改革にも繋がったのは前述の通りである。
<Questions>
Q 仕事で一番つらかった経験は?
3.11の時。次々に困難な決断を迫られる中、娘の小学校入学準備も重なった。
Q 好きな言葉は?
上善如水。形がなくどんな器にもフィットする「水」のようにありたい。
Q 仕事をしていてよかったと思う瞬間は?
読者の方、世界中の人々から反応をいただいた時に、喜びを感じます。
Q 今後3年間で挑戦したいことは?
世の中の女性が、多様な考え、働き方を選べるようになるための活動。
大門小百合◎英字新聞社ジャパンタイムズ執行役員 編集・デジタル事業担当。上智大学外国語学部比較文化学科卒業後、ジャパンタイムズ入社。政治、経済担当の記者を経て、2006年より報道部長。13年より執行役員。00年、ハーバード大学のジャーナリストプログラム(ニーマンフェローシップ)に合格し1年留学。05年にはサウジアラビアの王立研究院に研究員として招聘される。著書に『ハーバードで語られる世界戦略』(光文社新書)など。
※フォーブス ジャパンは昨年12月19日、日本最大規模の女性アワード「JAPAN WOMEN AWARD 2016」を発表。“働きやすさ”ではなく“真の女性活躍”の促進・発信を目指す同アワードで、大門小百合氏は革新をもたらすリーダーとして「個人部門賞」を受賞した。