66歳のゴウは台湾で2番目の富豪で、推定資産額は68億ドル(約7,650億円)に上る。鴻海は台湾企業だが、製造拠点の大部分は中国本土にある。ゴウの発表に先立ち、ソフトバンク社長の孫正義とアリババ会長のジャック・マーは、トランプタワーを訪れてトランプ大統領に直接、米国での投資計画を伝えている。ゴウを加えた3名は、トランプの「アメリカ・ファースト政策」を後押しする「東アジアの三銃士」とでも言えよう。
3名による米国での投資総額は570億ドル(約6兆4,000億円)に達する見込みで、創出される雇用は110万人に上る。マーは米国の中小企業がアリババを介して農産物や衣類を販売し、100万人の雇用を生み出す計画を表明している。また、孫はソフトバンクが今後500億ドルを米国に投資し、5万人の雇用を創出すると述べている。
孫正義、ジャック・マーと緊密に連携
孫はソフトバンク傘下のスプリントを通じて米国で既に事業を展開しており、マーもアリババの米国事業を拡大しようとしている。ゴウは二人に肩を並べる大物ビジネスマンだが、米国での知名度はそれほど高くない。また、トランプ大統領の誕生によって米中間の緊張が高まるなか、台湾国籍ながら中国政府とも近いゴウは微妙な立場に立たされている。
ゴウはトランプの大統領就任式に出席する台湾代表団のメンバーに選ばれたが辞退している。この判断には、トランプが蔡英文総統との電話会談で、中国政府が掲げる「一つの中国」政策に捉われない姿勢を表明したことが影響していると考えられる。ゴウは中国政府に配慮し、今後も同国における投資を継続すると表明している。
「中国政府が気にしているのは、鴻海が中国で引き続き投資を行う意思があるかということだけだ」とゴウは述べ、米国での投資計画に関して中国政府から圧力を受けていないと断言した。
鴻海の事業は、iPhoneの受託生産以外にも多岐に渡り、ナノテクノロジーやワイヤレスネットワークの分野で先進的な技術を持っている。米国での液晶パネル工場建設は、傘下におさめたシャープと共同で行う予定だ。