本連載では、その“学校”を卒業し、活躍しているビジネスパーソン同士の対談を通じて成功のヒントを紐解いていく。
第二弾は、マイネット取締役副社長の嶺井政人氏(元モルガン・スタンレー証券)とメタップス取締役副社長の山崎祐一郎氏(元ドイツ証券)による「新興上場企業」対談。後編では、転職の選択やベンチャーのおもしろさ、今後のビジョンを語ってもらった[対談:前編はこちら]。
谷本有香(モデレーター、以下、谷本): お二人は外資系金融機関でビジネス思考の基盤を築いた後、転職という決断をされたわけですが、どのような経緯でベンチャー企業へ参画されたのでしょうか。
嶺井政人(以下、嶺井): 私は28歳の時に大学時代からお世話になっていたマイネット代表取締役社長の上原仁からCFOとしてウチに来ないかと声がかかったことがきっかけでした。当時のマイネットは新規事業としてスマートフォンゲーム事業が立ち上がった時期で、韓国やシンガポールへの進出に向けて大きな勝負をかけていました。
学生時代から上原といつか一緒に仕事をしたいと思っていたことや、この場所なら20代でやろうと思っていた「英語・コーポレートファイナンス・ウェブ」の知識を全て活かせると思い、転職を決めました。
山崎祐一郎(以下、山崎):私はドイツ証券を4年目で退職した後、複数人の仲間とともにAIに関するチャットプラットフォームを提供する会社を設立しました。シリコンバレーで大学生活を過ごしたことや、すでにネット業界で活躍されていたバンカー出身の先輩の影響もあり、起業するタイミングを常に窺っていました。
ただ当時は、ビジネスモデルとしてAIを活用した事業は時期尚早で、自分が求める成長スピードには達していませんでした。そのとき出会ったのが、メタップスの佐藤航陽CEOです。さらに大きな事業にグローバルで挑戦しようという話になり、会社を休眠し取締役CFOに着任しました。
谷本:実際にベンチャー企業にCFOとして就任し、どんな苦しみやおもしろさがありましたか。
山崎:メタップスはM&Aを積極的に行っているため、組織が急成長したり、事業が多角化する局面を何度も迎えています。企業が大きくになるにつれて、様々な仕組みやルール、規程を改善しなくてはなりません。
大企業がこれまで何十年、長いところでは百年以上の歳月をかけて取り組んできた組織作りをゼロベースから構築しなければいけない点は、ベンチャーならではの苦労だと感じています。
その一方で、大企業に多いルーティーンの業務が少ない分、新たな取り組みを仕掛けられるのがベンチャーのおもしろいところだと思います。もちろん失敗もありますが、サービスがどのように受け入れられるかを自分の目で見て、失敗を乗り越え、あらゆる手段を駆使し、成長していく。それを継続していくところにやりがいを感じます。
嶺井:一番のおもしろさは、大きな変化の当事者になれる点ですね。IT業界以上に世界的にダイナミックに変化を遂げているマーケットはありません。テクノロジーの力を使って世の中を変えていきたいと思っている人たちの輪の中に当事者として関われるのは、私にとっての大きな醍醐味です。
もちろん社内外に課題は山積していますが、苦しいと感じたことはありません。解決すればするほど前進していける、そんな思いで日々目の前の課題に向き合っています。