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2016.11.18 15:30

米国にはびこる偽ニュースの「恐ろしい」実態


その基盤となったのが、スーパーマーケットで販売されるタブロイド誌の「エルビス・プレスリーは生きていた!」といった害のないガセネタの類いで、1990年代になると「ヒラリー・クリントンがエイリアンの赤ちゃんを養子に」「ビル・クリントンが宇宙人にわいせつ行為」という、とんでもない作り話まで飛び出す奇妙な場面もあった。

そして2000年代にインターネットが爆発的に普及すると、誰しもがコンテンツを作り出せるようになった。だがこの自由がもたらした影響は、客観的な真実が必要ない音楽や映画などのクリエイティブメディアと、事実と虚構を見分ける訓練が必要なジャーナリズムの世界とでは、大きく異なっていた。

ネット上とハリウッド業界ではすぐにファンブロガーのサイトが乱立し、セレブリティから得た情報をそのまま垂れ流すようになった。一方、ソーシャルメディア上で膨大な数のフォロワーを獲得した芸能人たちは、従来メディアを通じた情報発信の必要性を失い、インタビューを拒否するようになった。

ホワイトハウスの記者らは今、取材対象との密接な関係を築く「アクセス・ジャーナリズム」式の報道を追求した代償を払っている。次期大統領のトランプは長年の慣例を破り、報道陣をまいて行方をくらます行為を繰り返している。ホワイトハウス記者協会は反発しているが、一方でトランプの報道担当者はそうした行為について把握していないとしらを切り、トランプが「報道陣に対し隠し立てをすることは絶対にない」と述べている。こうした状況の中、正確で客観的な報道の必要性は、これまでになく高まっている。

偽ニュースの問題をより完全に理解するために、冒頭に挙げた「リチャード・ブランソン、ツェッペリン再結成ツアーに8億ドル提示」とのニュースを例に見てみよう。これはもともと、英タブロイド紙のサンデー・ミラーが2014年11月9日に匿名筋の話として報じ、その後デーリー・メール紙が同様の内容を伝えたものだ(両紙のサイトからは既に記事が取り下げられている)。この内容は数日以内に米CNNなどのメディアに取り上げられた。
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翻訳・編集=遠藤宗生

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