情報というものは、たとえ間違ったものであっても目を引くものであれば何らかの形で広まり、しぶとく生き延びる。冒頭に挙げた3つの例は、芸能界(とそれに伴う素人ジャーナリズム)が「偽ニュース」のまん延をいかに促したかを示している。こうした偽ニュースは、次期米大統領に選出されたドナルド・トランプの台頭にも貢献していた。
「もはや誰も事実検証をしなくなった。だからトランプが当選したんだ」。月収1万ドルという「偽ニュース作家」のポール・ホーナーは米紙ワシントン・ポストにこう語っている。「トランプの好き勝手な発言を人々は全部信じ、後になって事実ではないと分かっても、既に受け入れたものとして気に留めなかった。本当に恐ろしい。こんなことは、これまで見たことがない」
ソーシャルメディア運営各社はここにきて、対応策に追われている。「ヒラリー・クリントンのメール問題担当のFBI捜査官が遺体で発見される」などといった虚報が広まったフェイスブックは14日、こうした偽ニュース発信者による自社サイト広告ネットワーク利用を禁止した。
前日の13日には、グーグルの検索結果トップに「トランプが一般投票の得票数でもクリントンを上回る」という虚報が表示されていたことに批判が集中。同社はその後、「出版元やそのコンテンツ、または主な目的について誤解を与えたり、隠したりするページ」への広告表示を取りやめると宣言した。
だが、無名のメディアによる偽記事よりもさらに厄介な偽ニュースの種類がある。それは、ブログの世界で生み出された情報が主要メディアに拾われ、「事実」として生まれ変わる場合だ。