だが日本での事業展開には数々の障害が立ちはだかっており、同社は今後、悪戦苦闘を強いられるだろう。以下に、スポティファイが日本で苦戦すると筆者が考える主な理由を3つ挙げる。
1.日本人に響かないコンテンツ
スポティファイの創業者で最高経営責任者(CEO)のダニエル・エクは、東京で開いた発表会で、日本でのサービス開始について以下のように語った。
「これは私にとって夢の実現です。世界の200万人のアーティストたちの曲を日本に、そしてもちろん、皆が愛する日本人アーティストたちの曲を世界に届けられるのです」
日本上陸に当たって、新サービスの導入も発表された。再生中の曲の歌詞を画面に表示する機能で、カラオケを念頭に置いたものだ。
同社は日本で1年以上かけて準備を進め、提供邦楽曲の数を増やすべく複数のレコード会社と契約を結んだ。配信楽曲数は4,000万曲に上り、日本人向けのプレイリストも充実させたという。
世界のアーティストたちを日本に、そして日本のアーティストたちを世界に、というビジョンは聞こえこそいいが、ごく単純な事実を見逃しているようだ。
日本では、国産のバンドやアーティストに対する人気の比重が極端に大きい。スポティファイは日本のレーベル数社と契約を交わしたものの、提供できる楽曲数は限られている。
ジャパンタイムズは音楽配信専門家の榎本幹朗氏の話として、スポティファイの楽曲リストにはオリコンチャート入りしたヒット曲が半分も含まれていないことを指摘している。
同様の問題は、新しい「カラオケ」機能にもある。カラオケは通常、グループで楽しむためのものであって、家で一人楽しむものではない。さらに、日本では音響設備が充実したカラオケ店が至る所にオープンしている。新機能が日本のユーザーにどのような付加価値をもたらすのかは不透明だ。