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「複雑系×インターネット」で世界の情報流通に革命を起こす

ライバル企業の乱立でニュースアプリは“戦国時代”に突入したといってもいい。溢れるニュースの中から良質な情報を選択する独自のアルゴリズムを開発し、海外投資家からも注目を集めているのがSmartNewsだ。さらなる海外展開でグローバルベンチャーへの道を歩み始めた同社の哲学とは―。


 世界のスマートフォンユーザーはすでに20億人以上。今後は30億、40億人へと拡大するともいわれている。そのスマホ時代の主役の座を、パソコン時代の検索やニュースサイトに代わって誰が占めるのか。FacebookやTwitterなどのソーシャルメディア、そしてSmartNewsなどのニュースアプリが大きな役割を果たす可能性も大きい。「私たちのミッションは、『世界中の良質な情報を必要な人に送り届ける』ことです」(中略)

 投資家をうならせる鈴木のビジョンとはどんなものか。それは鈴木の経歴とも大きく関係してくる。
 東京大学特任研究員の肩書も持ち、『なめらかな社会とその敵』の著書も持つ鈴木は、情報処理推進機構から天才プログラマーの称号も得ている。専門は「複雑系」で、複雑に絡み合うニューラルネットワーク(脳神経回路)の研究に携わってきた。
 神経回路では刺激によって神経が発火し、それが次々と全体に伝播してゆく。この神経系の情報伝達の仕組みを人類全体に置き換えて、新しい情報流通のアーキテクチャーを作り出せないかと、鈴木はすでに04年にSNSと連動したニュースリーダーをつくっていた。(中略)鈴木が作成した革新的な情報流通の仕組みは高い評価を受けたが、残念ながらヒットには恵まれなかった。そんなときに出合ったのが、浜本のテクノロジーだった。

 浜本は、Facebook創業者のマーク・ザッカーバーグCEOより3年早い1981年生まれ。東京工業大学工学部情報工学科を卒業している。
 (中略)「もともと僕は趣味として、インターネットから大量にデータを集めてくるということが好きだったんです。そしてそのデータを可視化するとか、検索エンジンのようなものを自分でつくって、いろいろな条件に合わせて、あるデータを取り出せるようにするとか。そんなことを会社員のころから、個人プロジェクトとして取り組んでいたんです」
 事業戦略説明会の翌日、JR渋谷駅近くにある同社で、浜本はそう話した。その作業の面白さを、もう少しかみ砕いて説明してくれるようにお願いしてみた。
「僕は、非リア充(現実生活が充実していない人のこと)として、ずっと中高、大学と、コンピューター・オタクのような感じで育っていますので、一般のもっと平均的な世の中の、外で遊んでいるような人たちに比べて、情報格差が激しいんです」
 色白の童顔を少しゆるめながら、浜本はそう明かした。
「例えば、おいしいものが食べられる店とか知らないわけです。でも、ネットを見れば食店のレビューサイトがあって、レビュー情報を全部自分のサーバーに集めてしまえば、自分の考える最強の、一番おいしい店にたどり着けると考えたわけです。例えば、フレンチなら恵比寿周辺がおいしい。それがイタリアンになると、中心地が若干渋谷のほうに移るとか。そういうヒートマップ(色分けされた可視化グラフの一種)の濃淡を俯瞰して、おいしいレストラン情報を知ることができる、そんなWebサービスを作りました」
 (中略)浜本が、のちに共同創業者となる鈴木と出会ったのは09年12月。「Blogopolis」でグランプリを受賞してから約2カ月後のことだった。浜本は、鈴木の髭面で眼光がやけに鋭く、一度議論が始まると簡単に切り上げさせてくれない押しの強さに、「ただ者ではない」と直感。一方の鈴木も、大量のデータの解析と可視化の両方ができる、浜本の高い技術力に「ただ者ではない」と直感したという。

 それ以来、浜本が試作したソフトウェアを、鈴木が批評するという形で、その会合はしばらく続くことになる。そこから誕生したのが、(中略)Crowsnestというソーシャルニュースリーダーだ。しかし、日本、そして米国でもユーザーの反応は芳しくなかった。
「より多くのユーザーに使ってもらいたい」、という思いから路線を変更し最終的に誕生したのが、浜本の技術力と鈴木の理想が合体し、情報流通に革命を起こす可能性を秘めたニュースアプリ、「SmartNews」だった。
 この類まれなニュースアプリに、米国で“メディア界のレジェンド”とも言われるジャーナリストも魅力を感じ、同社に参画した。
 長年、米国ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙の政治部記者を務め、94年には世界最初期のオンラインニュースメディア「WSJ.com」を立ち上げ、初代編集長を努めたリッチ・ジャロスロフスキーだ。彼がスマートニュース社から誘われた役職は、コンテンツ担当のヴァイス・プレジデント。任務は2つ。米国版「SmartNews」にコンテンツを提供してくれる、米国内の出版社等との業務提携交渉。そして大量データの解析と可視化を行うアルゴリズムの改善を助けるトレーナー役だった。(中略)
 偶然のような必然ともいうべき出会いに恵まれ、この3人が同じ職場で働いている。(以下略、)

Ryu Arakawa

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