私たちは、変わらなければならない。望もうとそうでなかろうと、いずれにしてもデジタル化は進行している。デジタル化によって消える仕事がある一方で、新たな仕事も生まれている。
9月上旬に発表されたデータによると、米国の世帯収入は2015年、前年比5.2%の大きな伸びを示している。その背景には、時間当たり賃金の上昇と全く新しい雇用の創出がある。こうした状況は、製造、物流、小売の各業界でみられる。そして、いずれの業界においても個人とサプライチェーン設計の両面で、敏しょう性(アジリティー)が要求されている。
雇用に生まれる変化
サプライチェーン人材開発を手掛けるSCMワールドはここ数年、サプライチェーン戦略の視点からデジタル技術の動向を追ってきた。デジタルが持つ破壊力は、eコマースが伝統的な店舗ベースの小売業に革命をもたらした時点で、すでに暗示されていた。最近ではインターネットに接続されたハードウェアやより高性能で安価なオートメーション技術が、サプライチェーンの構造と仕事そのものの定義を変えつつある。
振り返ってみると、新しい破壊的技術は3年前から大量に生まれ続けている。ハードオートメションやERPの実装における最近の技術進歩と違い、この新たな動きはすぐに終わりを迎えることはないだろう。20世紀初頭に電化が進んだ時のように、デジタル化は仕事がどこでどのように、いつ行われるかを変えているのだ。
雇用の創出という面でいえば、これらはサービスの提供地域を拡大しているアマゾンなどのラストワンマイル物流や、オンデマンドで1時間100ドル(約1万円)の料金で便利屋を派遣するホームセンター大手ロウズのサービスに雇用機会の拡大がみられることを示している。非熟練労働者を最低賃金で大量に雇用していた小売業では、雇用人数を絞って給与水準を引き上げる方向に向かっている。