EUの行政を担う欧州委員会はさらに、アップルとアイルランド税務当局との間には「取り決め」があったと指摘。これは「国家による補助」を禁じたEUの規則に違反するとの見解を示した。だが、これに対してアップルは、自社はアイルランドでも米国でも、世界でも最高額の税金を収めていると主張。次の2つの点について、欧州委の指摘に反論した。
1. アップルはアイルランド政府から課税に関する優遇措置を受けていない。そのため、違法な「国による補助」は行われていない。
2. アップルはアイルランドが定める全ての税法を順守しており、課された税額の全てを納めてきた。追徴課税されることがあれば、税法の変更が遡及的に適用されたと考えられる。
「取引」はあったのか?
アップルが主張する第一の点について、アイルランド政府の立場は明快だ。
「アップルは課された税額を全て納めている。そして、アイルランド政府は同社に対し、一切の補助を行っていない。アップルに対する税制優遇措置はない」
しかし、欧州委はこれに対し、文書による双方の合意がなかったとしても、アップルに適用された衝撃的ともいえる低税率(2014年は0.005%とされる)が示すのは、そうした合意が「事実上」存在したということだと主張している。
EUは秘かに基準を変えた?
アップルの第二の主張は、欧州委が示した「新たな租税原則」に関連するものだ。これまで企業は、生産的価値が引き出された結果として得た利益に課税されてきた。これが法人税法の原則だった訳だが、今回の欧州委の主張では、それが大きく変更されたことになる。
アイルランドは、欧州委は税法の基本が「公正な税率」に基づくものだと考えていると批判する。また、税額は通常、企業が活動の拠点とする特定の地域で決められるものだが、米国やその他の欧州各国もアップルに納税を求めることができるのだとすれば、アイルランドが受け取る税額は大幅に減ることになる。