テクノロジー

2016.08.28 15:00

安全で便利! 生体認証のみの手ぶら決済/Liquid 久田康弘

Liquid代表取締役 久田康弘(写真=隼田大輔)

生体認証のみの決済を世界初の規模で実現したLiquidは同サービスの最前線に立つ。セキュリティと利便性を両立させた「インターネットオブピープル」時代の新しい課題解決を提案する。

来場者はエントランスで指紋登録を行い、デポジットを入金するだけ。その後は財布を持たずに、手ぶらで食事や買い物ができる。ハウステンボス内の地域通貨システムへテスト導入された生体認証決済サービス「Liquid Pay」は、数百万人規模の生体認証のみによる決済を世界で初めて実現した。

従来のデポジットシステムと比べた時のメリットは多い。ICカードなどの高額な導入費用は、指紋を決済IDとすることで大幅に削減できる。また、第三者による複製利用が不可能なため、犯罪リスクが極めて低い。

指紋情報は暗号化データに変換して管理され、万が一情報流出事故が生じたとしても、指紋画像自体の流出リスクがない。利便性とセキュリティを両立させた決済サービスであり、イオン銀行や湯河原温泉エリアなどでも実証実験が進んでいる。

同社が開発した生体認証エンジン「Liquid」は、独自の画像解析技術とビッグデータ解析技術によって高速処理を可能にしている。独自のインデックス技術を用いて本人特定を行い、突合に掛かる時間を、1ユーザーあたり従来平均の1,000分の1にまで短縮させた。指紋のみならず、虹彩や顔認証といった生体認証にも応用でき、これからの生体認証のスタンダードとなる可能性を持つ。

「生体認証サービスでは、新しい時代のユーザーと情報を繋げるインフラとして、アジアでの本格展開と2020年に向けた日本での更なる普及を目指しています。画像解析サービスでは、コンピュータの新しい情報取得の形として、自動車、スポーツ、ヘルスケア等での深掘りを進め、世界で競争優位性のあるプロダクトにします」

サミットでは、カーシェアリングにおける鍵の認証を提案した。また、同社の画像解析技術は自動運転時の“目”としての活用も期待される。

「現在アジア4カ国で事業展開する我々は、新しい都市・空間のインフラとなるICT技術を目指しています。アジア各国の都市渋滞は身に迫った問題であり、i-ROADのようなプロダクトと我々の技術の親和性は非常に高いと感じています。日本の高いサービス水準レベルで、アジアにおける共通問題を一緒に解決していきたいです」

Liquid
資本金:1,600万円
設立:2013年12月
事業内容:生体認証システムの開発及び販売

くだ・やすひろ◎2008年、慶應義塾大学法学部法律学科卒業。在学中より金融工学分野でのエンジニアリングワークに取り組む。卒業後は投資銀行勤務、ベンチャー企業の事業推進技術顧問を経て2013年12月にLiquidを設立。

文=土橋克寿

この記事は 「Forbes JAPAN No.27 2016年10月号(2016/08/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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