君は、斜面を怖がっている。転ぶことを恐れずに、斜面に飛び込んでみなさい。
この言葉を聞き、腹を括り、思い切って斜面に向かって飛び込んだ。その瞬間、驚いたことに、それまで身につけてきた個別の技術が一つになり、全身が自然に動き、急斜面も滑れるようになった。
思い出深い瞬間であるが、この体験から、二つ、大切なことを学んだ。一つは、プロフェッショナルが高度な能力を習得するとき、身につけた個別の技術が、「全体性」を獲得する瞬間があるということ。もう一つは、その瞬間は、「技術の在り方」ではなく、「心の置き所」と呼ぶべきものを掴んだとき、訪れるということ。
実は、このことは、スポーツの世界だけでなく、ビジネスの世界でも、共通の真実である。例えば、一流のプロフェッショナルが発揮する高度なプレゼンテーション能力。それは、プレゼン資料の作り方、スライドの映し方、切り替えのタイミング、プレゼンの姿勢、身振り手振り、表情や眼差し、そして発声など、一つひとつの技術を習得しただけでは、決して身につけることはできない。そうした個別の技術を磨いても、なかなか、顧客の共感を得られるプレゼンテーションができないとき、ふと、優れたプロフェッショナルからアドバイスを受ける。
君は、「顧客に売りつけてやろう」という気持ちが強すぎる。顧客は、その操作主義を感じ、気持ちが離れていく。君の説明は、流暢だが、どこか「上から目線」になっている。その無意識の傲慢さを、顧客は感じ、気持ちが冷めていく。