フォーブスが会議に先立ち入手したプレゼンテーションの内容には、これまで明らかにされていなかった同社の新技術に関する詳細が記されていた。セラノスはこれで今後、批判の声をかわすことができるのだろうか。いや、米司法省と証券取引委員会の調査を受けている同社については、さらなる疑問の声が上がることになるだろう。
セラノスの創業者、エリザベス・ホームズCEOが会議で発表したのは、ミニラボ(miniLab)システムと呼ばれる新たな検査機器と、同機器を使って行われたコレステロール、白血球数、ジカウイルスに関する検査結果だ。
これらの検査データは、米厚生省の下部組織であるメディケア・メディケイド・サービスセンター(公的保険制度の運営主体)が問題視した検査手法と直接的な関係はない。同センターはホームズに対し、今年9月以降は医療検査事業への関与を禁じる処分を下しており、今回セラノスは、問題になった過去の検査機器ではなく新たな手法で、事業の継続を試みる姿勢を示したのだ。
ホームズは事前に用意した声明の中で、「ミニラボシステムは当社が開発した単一プラットフォームで、少量の血液サンプルで幅広い種類の検査を行うことができるものだ。分散した環境下で行われる検査を、集中型の監視体制の下で実施することが可能な枠組みを提供する。数年内に、この素晴らしいテクノロジーが米食品医薬品局(FDA)の認可を得られることを期待している」と述べている。
同システムによる検査結果として示されたデータの多くは、セラノスが大きな売りにしていた「指先から針でごく少量の血液を採取する」方法ではなく、静脈から注射針で採取した血液で行った検査結果をまとめたもの。プレゼンテーションに含まれるのはわずか11種類の検査データだが、同社は「最大40種類の検査が可能だ」としている。ただ、当初の「一滴の血液で多数の検査が可能」という触れ込みからは、大きくかけ離れている。
フォーブスがこれらデータについて確認を依頼したカナダ・ブリティッシュコロンビア州のセントポールズ病院の臨床化学部門トップ、ダニエル・ホームズ(セラノスCEOと血縁関係はない)は、「われわれが関心を抱いている問題については一切触れられていない」と指摘。「このシステムは基本的に、検査機器の試作品だ。彼らは試作品に関する初期調査を行っているに過ぎない」と語った。
これまでもセラノスに批判的だったワシントン大学のジェフリー・ベアード准教授はさらに厳しく、「プレゼンテーションは“おとり商法”だ」と一蹴。「セラノスが開発した技術ではなく、その単なる初期段階、つまり構想が示されているだけだ」と切り捨てた。
ただ、データを見る限りでは、試作品の性能には期待ができそうでもある。ミニラボの検査結果と、独総合電機大手シーメンスがの既存の検査機器による検査結果には、いくらかの一致がみられるのだ。今後の問題は、セラノスが近く規制当局の認可を得てエボラウイルスやジカウイルスの検知機器として販売を開始したいとしているミニラボが、外部の専門家らに対してどれほどの説得力を持てるか、という点だろう。