「ガチャ依存」が続く国産ゲーム
――ポケモンGOが画期的なのは日本のソーシャルゲームで必須になっている、ガチャ課金(くじ引き的な仕組みでアイテムを付与し、ユーザーの射幸心を煽る仕掛け)がない点です。これは日本のモバイルゲーム業界に「目を覚ませ」と呼びかける効果もあると思いますか?
ガチャは日本では受け入れられていますが、海外では決して成功しない仕組みです。海外ではゲームを有利に進めるためのアイテムやコインに課金する方式が主流で、客単価も日本のゲームと比べると格段に低い。ナイアンティックの戦略が優れているのは、ポケモンという日本のブランドを用いたゲームでありながら、日本上陸に際して、ガチャの存在を無視した点です。
しかし、ポケモンGOの成功を目にしても、日本のモバイルゲーム企業は、今後もガチャを使い続けるでしょう。何故なら、ガチャは非常に強力な集金システムだからです。さらに、ポケモンGOは従来のソーシャルゲームとは全く違ったゲームであり、彼らの参考にはなりません。ポケモンという非常に強力なIP(キャラクター)とGPS、そしてARを組み合わせたポケモンGOは、ガチャを必要としない「例外的な」ゲームなのです。
ポケモンGOが与える「恩恵」
――ガチャは非常に有害なシステムであるという批判もあります。月に数十万円に及ぶ重課金を生じさせるガチャは、社会問題も引き起こし、業界団体はガチャでレアアイテムを取得させる際の金額の上限を5万円以下にする動きも見せています。しかし、このガチャ依存こそが、日本のモバイルゲームが海外で成功できない理由との見方もあります。
全くその通りです。正直な話、ヨーロッパや米国のユーザーはガチャに嫌悪感を抱きますし、理解不能と捉えるでしょう。ガチャ依存が日本のモバイルゲームの海外進出を阻んでいることは確かです。
そして、さらに深刻なのは海外市場向けに、ガチャに置き換わる仕組みを生み出すことが非常に困難であることです。今後も日本企業は、ガチャを搭載したゲームをヨーロッパや北米向けにリリースして、失敗を重ねるという状況が続くと見ています。
――見方を変えると、ポケモンGOの大ブームにより、これまでスマホのゲームに触れたことのない新たな客層が日本で生まれたとも考えられます。その意味では日本のモバイル業界には好機とも考えられますか?
同意見です。ポケモンGOと既存のソーシャルゲームは非常に異なったコンセプトで、異なったユーザーを相手にし、全く違うユーザー体験を与えています。ポケモンGOは全く新しいゲームとして、これまで既存のソーシャルゲームを一切触れたことが無かった層を掘り起こします。それらのユーザーが既存のソーシャルゲームに流入するといった事態も想定できます。ポケモンGOは文字通りゲーム・チェンジャーとして、従来の流れを変える存在です。しかし、必要以上に恐れる必要はありません。ゲームはまだ終わってはいないのです。