「年内のリリースに向けて多くの作業が残っている。サービスの詳細はリリースの際に明らかにする」と両社は公式声明で述べた。提携の具体的な条件については明らかになっていない。
これまでネットフリックスとコムキャストは激しい契約獲得競争を繰り広げてきた。2012年にはネットフリックスのリード・ヘイスティングスCEOが、コムキャストによるデータ通信の制限が、ネットワークの中立性を犯すものだと糾弾した。ヘイスティングスはコムキャストがタイム・ワーナーの買収を発表した際も公に反対を表明していた。
ネットフリックスは大手ケーブルテレビ会社から批判を浴びながらも加入者を急速に増やし続け、人気番組の放映権を数多く獲得してきた。同社はコムキャストとの提携を発表した同日にも、米放送局The CWで放送中の人気ドラマ「Jane The Virgin」、「The Flash」、「Supergirl」を配信する権利を複数年延長したことを明らかにした。
積年のライバル同士が異例の提携
ネットフリックスの加入者数は8,100万人を超え、今年Q1の売上高は18億ドル(約1,818億円)に達した。それでも同時期に188億ドル(約1.9兆円)を稼ぎ出したコムキャストに比べると小さく見える。コムキャストのケーブルテレビ加入者は2,240万人に上り、35%を占めるX-1プラットフォームの利用者が年内にネットフリックスの番組を視聴できるようになる。ネットフリックスとしてはこの提携により1億人の視聴者獲得も、視野に入った形だ。
ネットフリックスは、ケーブルテレビ最大手のコムキャストと組むことで新規契約の獲得とロイヤリティの向上が期待できる。「ユーザーは面倒な手順を踏まずにストリーミングが視聴できるようになることを望んでいる。今回の提携でそれが実現することになり、両社にとってメリットは大きい」とeMarketerでアナリストを務めるポール・ベルナは話す。
一方のコムキャストは、これまでコンテンツ制作や番組配信において支配力を乱用しているとして規制当局から睨まれてきた。「コムキャストが自社システムから競合他社を排除しようものなら当局が直ちに警告を出す状況にあった」とベルナは話す。しかし、今回のネットフリックスとの提携はこれまでと真逆の行動であり、当局との関係を改善することができるだろう。ライバル同士の提携は一見奇妙に見えるが、ストリーミングサービスの人気の高まりを受けて、メディア業界の巨人であるコムキャストですら民意を尊重せざるを得なくなったというのが真相だろう。