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スイスで6月初め、すべての国民に無条件で一定の金額を毎月支給する「最低生活保障(ベーシック・インカム、UBI)制度」の導入の是非を問う国民投票が行われた。そして、結果は大差での否決だった。

導入については何年も前から検討が重ねられ、支給額は年間一人当たりおよそ3万ドル(約310万円)とされていた。だが、UBIの考え方は「現実不可能、無責任、社会主義的」、さらには「まともではない」のあらゆる同義語や類語で批判されてきた。

UBIがスイス国民の合理的な考えに基づいて否決されたということならば、この案は全面的に否定されたということになる。だが、実際にはこの案は、まだ完全には打ち消されていない。

奇妙な「政治的同士」たち

投票の実施に時期を合わせて、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは同国のシンクタンク、アメリカン・エンタープライズ研究所のチャールズ・マレーの評論を掲載した。マレーは自国のUBI導入に賛成の立場だ。広く評価される保守系シンクタンクの研究員が書いたものでありながら、新自由主義志向といわれる新聞に掲載されたこの論評は、社会通念への大きな挑戦ともいえるだろう。

この論評は同時に、現在のサプライチェーンの構造の下で近い将来、仕事がなくなるという現実への回答でもある。私たちは事業における計画や調達、製造、輸送において追い求める破壊的なテクノロジーに対し、懸念を持っている。マレーはその懸念に対し、行動を起こすよう呼びかけているのだ。私たちが追求するテクノロジーは、新たな雇用形態が人材を受け入れる準備が進められる以上のスピードで、現在ある仕事を排除している。

仕事のない未来

私はこの3か月ほどの間に、サプライチェーンを担当する各業種の幹部ら数十人にデジタル化について話を聞いた。すると、化学品メーカーから小売業者まで、すべてが同じ方向を目指していることが分かった。実現はまだ20年近く先のことだとしながらも、いずれもさらなる自動化と人員削減の実施を考えている。

日常の管理業務を排除するため、さらには調達や予測、生産計画、顧客サービスにおいて従来、管理職の仕事とされてきた問題解決に関わる業務の一部に代えるものとして、人工知能(AI)を取り入れようとしているのだ。私たちは確かに、雇用の創出に関する問題に直面している。

編集=木内涼子

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