CFPBが提案した規制案は、貸主(金融業者側)に対して借主の返済能力を考慮に入れるよう求め、また貸主が借主の銀行口座から返済金の回収を試みることができる回数を制限する内容(この回収法は借主側に手数料の支払い義務が発生しかねない)。年率390%近くにも達する超高金利のペイデイローンを制限する上での大きな一歩だ。
この規制案について非営利組織ピュー慈善信託のニック・バークは、悪質な融資を減らすことはできるかもしれないが、人々が良心的な金利で短期の借り入れを行えるようにする上では役に立たないと問題点を指摘する。
「規制案は、銀行によるより低金利の融資を締め出すものだ」とバークは言う。「銀行ならペイデイローンよりも6倍低コストでこうした融資が行える可能性がある。なのに連邦政府は、安全な小規模分割払い融資に関するガイドラインを策定していない。CFPBがすべきは、この市場に銀行を引き入れるべく、そのガイドラインを策定し、大勢の借主がコストを節減できるようにすることだ」
ガイドラインがないのも無理はないかもしれない。少なくともワシントンでは、日常的に銀行叩きが行われているからだ。だがそれでも、大部分の米国民にとって、銀行が依然として最も規制され、また利用しやすい資金源である事実は変わらない。
「CFPBは好きなだけペイデイローンの金融業者を規制すればいい」とバークは言う。だが銀行がより多くの人に、より多くの小規模融資を行わなければ、そもそも高金利の融資条件を生み出す市場「機会」を完全に撲滅できる見込みはほとんどないと指摘する。
銀行側にとっても小規模融資市場に参入するメリットはある。バークによれば、ペイデイローンを利用している人々は一般に、約30,000(約320万円)ドルの年収がある。彼らがペイデイローンを返済できなくなる理由は貧困などの長期的な問題ではない。借り入れの目的は300~400ドル(約32,000万~42,000万円)程度の不足分を埋めることで、10人に7人は家賃や光熱費、カードの支払いなど当座の支払いが目的だ。
CFPBの規制案は、毎月の返済額を借主の収入の5%までに制限するなどの基準を設定しておらず、悪質な融資の撲滅やより良い選択肢の提示という点では適切なものとは言えないとバークは言う。
ピュー慈善信託の調査によれば、現在のペイデイローンは一括返済型で、借主は翌月の給料日に全額プラス手数料の支払いを行わなければならない。そのため多くの借主が借り換えを行い、375ドル(約40,000円)を借り入れるために平均520ドル(約55,000円)の手数料を支払う羽目になる。こうして1年のうち平均5か月、借金を抱えた状態が続いているのだ。
単にペイデイローンの金融業者を取り締まるだけでなく、良心的な短期融資を利用できる道を提供することができれば、CFPBは何百万人もの米国民の役に立つことができる可能性がある。大々的に報道されることはないかもしれないが、最終的にはより多くの人を手助けすることができるかもしれないのだ。