胡錦濤前国家主席の「ソフトパワー戦略」を受けて、中国各社がエンターテインメント事業へ積極的に出資するなか、これは想定されていたことではあった。
だが、ワンダの王健林会長が惹かれたのは、レジェンダリーの事業だけではない。決め手は、同社のトーマス・タルCEO(45)だった。
タルは、映画配給会社大手ワーナー・ブラザーズと組んで『ダークナイト』などの人気作をつくってきた。制作費を折半し、10%の配給手数料を支払ったうえで、利益を分け合うという画期的な仕組みを業界内で確立。リスクをとることで、同社は躍進したのである。
王会長も「完璧なパートナー」と、タルに期待する。売却後もCEOに留まるタルも本気だ。なにせ、中国語の勉強を始めているのだから。
トーマス・タル◎米映画制作会社「レジェンダリー・ピクチャーズ」共同創業者兼CEO。ハミルトン大学在学中に広告ビジネスを始め、卒業後に洗濯チェーンを起業。2000年にメディア界に移り、レジェンダリーを立ち上げた。映画配給会社ワーナー・ブラザーズと共同で『ダークナイト』や『インセプション』などの世界的なヒット作を連発している。
▼この記事は6月号(4月25日発売)に掲載されています。