サプライチェーンにおける人権侵害が世界の課題に
「人権侵害」や「強制労働」。自分たちには関係がない、と思っていると、思わぬリスクに見舞われることになる。15年3月、イギリスでは「現代奴隷法」が成立し、10月に施行された。これは、イギリスで事業の一部を行う事業者のうち、年間の売上高が3,800万ポンド(約63億円)以上の企業は、毎年、「奴隷・人身売買報告書」を作成しなければならない、というものだ。イギリスに1社でも支社を持ち活動している商社や小売り、ベンチャーなど、多くの日本企業が上の条件に当てはまる可能性がある。
この報告書には、「組織の構造、事業内容及びサプライチェーン」「奴隷と人身売買の行われるリスクのある事業とサプライチェーンの部分、及びそのリスクを評価し、管理するためにとった措置」などの項目も含まれ、取締役会が承認し、経営トップが署名しなければならない。
国連の報告によると、世界の強制労働従事者は、アジア・太平洋地域がトップで1,170万人いるといわれる。自社の孫請け、ひ孫請け企業が、これに当てはまらないと断言できるだろうか。「一部の無知は、企業経営に大きく影響します。今、世界でどのようなことが課題になっているのか。目を向けることが、次世代のリーダーには必要とされているのではないでしょうか」(田瀬)。
たせ・かずお◎1992年外務省入省。2004年より国際連合事務局・人道調整部・人間の安全保障ユニットに出向。14年5月に国連を退職、6月より現職。公共政策と民間利益の『共創』をテーマに活動する。