ビジネス

2016.04.05

経営者は「人事はバックオフィス」という考えは捨てた方がいい

リンクアンドモチベーショングループ代表 小笹芳央(写真=鷲崎浩太朗)

加速するビジネスの世界にあって、ヒット商品の賞味期限は日に日に短くなっている。そんななか、「企業はますます、人材によって事業戦略を規定される」とリンクアンドモチベーショングループ 小笹芳央代表は語る。生き残りたいのなら、経営者は「人事はバックオフィス」という考えは捨てた方がいい。

これからの時代は“事業戦略”よりも“人事戦略”の重要性が高まるーー。これは、私がリンクアンドモチベーションを創業した16年前から社会に発信してきたメッセージだ。企業が直面する2大市場は「商品市場」と「労働市場」。この2大市場への適応力が企業の盛衰を決めることになる。

ところが多くの企業では「商品市場」への適応=“事業戦略”が過度に重視され、労働市場への適応=“人事戦略”は、バックオフィスの業務と捉えられ、どちらかと言えば軽視される傾向が強かったように思う。

しかし、時代は大きく変わった。IT技術の発展や顧客ニーズの多様化、高度化といった流れによって、一度は成功したビジネスモデルも商品も、短期間のうちに模倣されたり陳腐化したりする時代となった。すなわち、一発のヒット商品で長期間にわたって安泰でいられる時代ではなくなったのだ。そういう意味では、企業にとっての重要テーマが「いかに変化に対応し続けるか」に変わったと言えるだろう。

そもそも、戦略を生み出すのも商品を生み出すのも、そこで働く「人材」。企業にとっての最大最強の資源である「人的資源」の採用や登用や活用といった“人事戦略”こそが、商品サービス市場での勝敗を決する時代に突入している。つまり、企業が注力すべきは「労働市場への適応」「労働市場における優位性の構築」なのだ。

多様な人材から選ばれ続ける企業へ

企業が「労働市場への適応」「労働市場における優位性の構築」を実現するには、多様な人材を惹きつけ、活用できる魅力因子を組織内部に創り出す必要がある。多様なスキルや経験を持つ人材を取り込むための魅力因子を備えることはもちろんのこと、今後は、働く日数や時間、働く場所、契約形態などの多様化を図り、有能な人材から「働きたい」と思ってもらえるようなメニューを整備しなければならない。人材流動化が進む状況下では、ますます「人材を惹きつける」「人材から選ばれる」企業を指向すべきである。

経済発展を成し遂げ成熟期に入った今日の日本では、「ワークモチベーション(=働く目的)」の多様化が進展し、働き方の自由度を求める声が大きくなっている。この変化に企業が適応するには、多様なスキルや背景を持った人材に「働きやすさ」と「やりがい」を提供すること以外に道はない。働き方のメニューやインセンティブを多様化することで、結果的に“ホモ集団”から“ヘテロ集団”への変貌を目指すことが多くの企業の危急のテーマではないだろうか。
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文=小笹芳央

この記事は 「Forbes JAPAN No.22 2016年5月号(2016/03/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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