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2016.03.02

ヘッジファンドが希望を託す「世界3大マイナス要因」

zhengzaishuru / shutterstock

相場が一方向に動き、かつボラティリティが高まる昨今の環境は、ヘッジファンドに大きなベットのシナリオを提供する。

第1は原油安シナリオ。シェールガス革命や中国を中心とする新興国経済の悪化など需給悪化はあるものの、根本にはOPECの価格支配力低下という枠組み変化がある。原油の生産コストは1バレル10ドル以下と低く、原油価格20ドル割れを予想する向きは多い。実際、ヘッジファンドによる原油の売りポジションは昨年末最大を記録した。

第2は中国元安シナリオ。昨年8月の中国による通貨切り下げは、中国元の信任を得るためにそれまで政策誘導により割高だった元価格を、より市場に任せようとした開かれた中国への枠組み変化である。しかし元安が想定以上となったため、逆に元の買い支えに向かったが資金流出は止まらない。海外投資家のみならず中国国民が元に不信感を持っているからにほかならない。

第3は米国ハイイールド市場の崩壊シナリオ。米国金利の9年ぶりの引き上げと原油安によるエネルギー関連企業の採算悪化から、昨年、ハイイールド価格の下落を予測したヘッジファンドは多い。すでにハイイールドの平均デフォルト率は11%までに上昇する一方、市場は14%まで価格を織り込むが、さらなる悪化を予測する向きは多い。

個人的には原油は20ドルまで、元もさらに10%下落とみる一方で、ハイイールド市場はその価値をどこかで回復するとみる。原油や元はより政策的な関与が大きく一方向に振れやすいのに対し、ハイイールド市場には市場メカニズムが働く余地があるからである。

文=高野 真

この記事は 「Forbes JAPAN No.20 2016年3月号(2016/01/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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