買収相手の候補は誰なのだろうか。時価総額3,180億ドルの同社にとって、選択肢は豊富にある。独立系石油・天然ガス大手の米アナダルコ・ペトロリアムは以前から、エクソンが狙いを定めている同業他社とうわさされてきた。アナダルコ株は65%下落、時価総額は190億ドル余りとなっている。
また、いずれも米企業のオクシデンタル・ペトロリウム、コノコフィリップス、アパッチの時価総額はそれぞれおよそ、510億ドル、470億ドル、150億ドルとなっている。さらに時価総額が下落している同業他社もある。マラソン・オイルは65億ドル、デボン・エナジーは110億ドルとなっている(各社の時価総額はいずれも2月月初時点)。
もちろん、買収相手の負債はエクソンが引き受けることになるが、同社にとってはそれも大きな問題ではない。エクソンの負債残高は380億ドルで、その他の石油会社に比べれば低水準だ。
ロイターによると、エクソンは2015年に40億ドル(約4,580億円)相当の自社株買いを実施。過去10年間に、毎年平均200億ドル規模の自社株買いを続けた。原油価格が史上最高値を付けた2008年には、最も多い350億ドル相当の株式を買い戻している。一見、今回の自社株買いの中止は、合理的な決定にもみえる。石油業界の業績が低迷するなか、エクソンは単に現金を確保しておきたいのかもしれない。同社は今年、設備投資を80億ドル削減する計画も掲げている。
石油業界では、1998年にBPがアモコを480億ドルで、エクソンが750億ドルでモービルを買収して以来、大規模な合併・買収は行われていなかった。しかし、英蘭系ロイヤル・ダッチ・シェルが先ごろ、英BGグループを520億ドルで買収する計画を発表している。
エクソンは自社株買いの中止によって市場に向け、自らが新たな取引への準備を整えていることをアピールしているのだろう。