Viber創設者がローンチした配車アプリ、Junoの「太っ腹」戦略

Viberの元CEOタルモン・マルコ氏 (Photo by Chris McGrath/Getty Images for Rakuten)

世界制覇を目指す配車サービス、ウーバーの最大の強みは、同時に最大の弱点でもある。ウーバーで働くドライバーらの多くは、同社で働くことが幸せだとは感じていない。

現在、ニューヨーク市内で密かに準備中のスタートアップ企業、Junoはウーバーよりも幸せな職場をドライバーに与えようとしている。同社を運営するタルモン・マルコ(Talmon Marco)は、メッセージアプリ バイバー(Viber)の元CEO。2014年にバイバーを楽天に9億ドル(約1026億円)で売却した人物だ。

マルコによると同社のサービスは、競合の配車サービスとは大きく異なるという。最大の違いはドライバーらの待遇だ。ウーバーはここ数年、ドライバーへの報酬を引き下げて彼らの反感を買っている。それに対しJunoは、ドライバーから徴収するコミッションをわずか10%に抑え、残りは全てドライバーの取り分にするという。マルコによると「現在、調達した資金の50%はドライバーに払うように準備している」という。

「配車サービスはそろそろ、ドライバーの待遇をもっと良くすることを考えるべきだ」とマルコはフォーブスの取材で述べた。「倫理的で社会的責任のある配車サービスが登場するべき時期だ。Junoが目指すのはそんなサービスなんだ」

Junoがローンチの準備を進めるニューヨークは、世界で最も配車サービスの競争が激しく、利益が見込める市場だ。ウーバーやリフト、Gettらの競合がひしめいている。同社は現在、サービス開始に向けた実験を行っている。その実験とはウーバーのドライバーに週25ドルを支払い、走行中にJunoのアプリを起動し続けてもらうことだ。

このデータ収集の試みをマルコはJunoのベータテストと位置づけている。「全てが順調に進むかどうかを見極めている。このテストを通じ、交通状況のパターンや、トラフィックの流れ、混雑する時間などのデータを収集している」

企業情報データベースCB Insightsのアナリスト、Anand SanwalはJunoが既にマルコの母国イスラエルにエンジニアのチームを雇用したと報告している。また、彼らは1万スクエアフィート(約930平方メートル)のオフィスをニューヨークの1 ワールドトレードセンタービルに確保したとも伝えている。

ドライバーの確保に注力することはウーバーらの競合と戦う上で、適切な戦略なのかもしれない。しかし、同時にリスクも孕んでいる。配車サービスはある意味、規模が非常に重要なビジネスだ。乗客やドライバーが多ければ多いほど、信頼感が高まる。米国や他の諸国で、ウーバーは巨大な規模を持ち、豊富な資金力を誇っている。たとえドライバーから反感を買っても、彼らのビジネスは持ちこたえている。

配車アプリの多くは一時ボーナスや、報酬のインセンティブ、稼働時間の保証などの特典でドライバーの気を惹こうとしている。乗車料金の90%をドライバーに還元するJunoの太っ腹な戦略は、競合から一歩抜きん出る成果を生み出すのだろうか。それとも、投資家らから集めた金を燃やし尽くすだけになるのだろうか。Junoの挑戦を見守っていきたい。

編集=上田裕資

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