それこそが、「その仕事はあなたにとってベストではないよ」と伝えてくれる重要なサインを見逃してしまう最大の原因だ。最初は小さすぎて気が付かなかったとしても、時を経るごとにサインは大きくなっていく。それにも関わらず、私たちは見過ごしてしまうのだ。それらのサインは、少し前にはあなたにピッタリと思っていた仕事が今や耐えられないほどのミスマッチになっているのだと教えてくれることがある。友人のベッキーに起こったのはまさにそれだ。
ベッキーは同じ職場で6年間働いていた。初めてその仕事に出会ったとき、ベッキーは嬉しくて仕方なかった。給料も十分で、同僚はフレンドリー、職場の雰囲気も快適で、なんといっても自宅からたった10キロの距離にあった。
彼女は有能で毎日よく働いた。でも、午後になると時間の流れが遅くなるように感じていた。その傾向は年々強まり、ついには金曜午後の終業時間にたどりつくまでが苦痛の連続となっていった。「通勤の車の中でいつも転職のことを考えていたわ。自分は本当にそうしたいのかって。でも実際に転職情報を探したり、他のキャリア機会について調べたりは一度もしなかった。そんなとき、一度に変化が訪れたの」。
ベッキーの職場はNPO団体だった。前任者の退任にともない役員の中から新しい取締役が選ばれたことで、状況が一変する。「すぐに、私も同僚たちもみんな、職場の空気が凍りつくのを感じたわ」。役員たちはベッキーのNPO団体が機能不全に陥っていると察知した。それまで社員間の対立などとは無縁だった職場は、新しい取締役が就任してからぎこちなくなり、誰もが次は自分が解雇されるのではないかとビクビクしていった。
新しい体制下での変化についてあれこれ憂うくらいならと、ベッキーは転職することに決めた。新しい職場は家から18キロと以前と比べれば少し遠いが、心は晴れ晴れしている。「毎日通勤の車の中で歌を歌ってるの。どうして前の職場でそんなに長く働いてたのかって」。
その理由は、ベッキーが職場で風向きが変わっていたのにそのサインを見過ごしていたからだ。取締役は退任までの最後の2年間、ドアを閉めきってほとんどの時間を自分のオフィスで過ごしていた。ベッキーは振り返りながらこう言った。「1年、5年、ましてや10年先の会社の見通しなんて考えたこともだれかに聞いたこともなかった。財政的な状況も問題なさそうだったし、何も心配ないと思っていたから」。
ベッキーは職場の活気についても全く気にしていなかった。「金曜日の5時になるとみんな帰って、職場は空っぽになっていた」と言う。「職場ですることなすこと、すべてお決まりのことばっかりだったから、みんな流れでやっていた。今になって思えば、そういうことにももっと早く気が付くべきだった。何年も同じ状況が続いているからって、安心していていいわけがないのよね」。
さて、以下5つのチェックポイントは、今の仕事があなたの可能性や潜在能力を絶やしていないかどうかを見極めるヒントになる。小さな殻のなかにとどまっているだけなら安心かもしれないが、これからの人生について考えるなら、より大きな枠組みの中で、もしくは枠を取っ払って考える必要があるということを念頭に、自分にあてはめて考えてみてほしい。
あなたと仕事のミスマッチがわかる5つのサイン
あなたの知性が歓迎されない
もし今の職場にあなたの意見に耳を傾ける人がいないなら、あなたがどんなに素晴らしいアイデアを持っていてもすべて無駄になる。どんなに給料が高くても、あなたの創造力を刈り取ってしまう職場なら代償があまりに大きい。あなたの能力が認められずごみのように才能を捨ててしまっているなら、あなたの才能が活かせる別の仕事を探す時期だ。
山も谷もない仕事
もし今の仕事にあなたを奮い立たせるような困難がなく、何か大きな問題に取りかかるたびにだれかに足をひっぱられるような環境なら、その仕事は本当にあなたに相応しいものなのかを真剣に見直す必要がある。刺激のない職場に毎日通うこと自体が試練や苦痛になってしまっては本末転倒だ。仕事が退屈すぎるなら、その仕事のために費やす時間や、知能や精神的負担のすべてが無駄になっているのと同じだ。
将来活躍できる見込みがない
時に、もうこれ以上がんばっても将来性がないという状況がある。友人であるネルソンの上司は彼に言った。「ネルソン、君は有能な社員だ。でも長期的にみると、我が社はもう君がこれ以上活躍できる場を与えることはできない。数年もたてば、より高い賃金を保証することもできない。会社は、この部署で働いている入社5年とか7年クラスの社員には、実のところ一円でも多くお金を使いたくないと思っているんだ。それがここのやり方さ」。ネルソンは上司の率直な意見に感謝し、1年どこか別のところで働いてみながら別の道を探ることにした。その考えは正しかった。ネルソンは会社任せでなく、自分のキャリアプランに従って前進している。
目標にできる人がいない
職場を見渡してみて、目標にしたり学ぶべき人がいないというのでは心が浮かばない。知的好奇心があり、あなたに何か教えてあげようという人がいないというのは憂鬱だが、こう考えることもできる。「よし、ここにはこれ以上学ぶべきことはない。次のステージへ進む時だ!」
あなたの炎が消えかかっている
もし平日の朝出勤のために起きるのが嫌でたまらないなら、それは体から出ているサインだ。そのメッセージに抵抗すればするほど、体は反応する。体が大丈夫じゃないと言っているのにあなたが問題を意図的に無視し続ければ、最後には病院送りになるかもしれない。
あなたには、自分自身とあなたを評価してくれる人のためにも、成長し続けていく使命がある。あなたを受け入れ認めてくれる人は、あなたの努力やがんばりに値する人たちだということを胸にとめて、より良いチャンスをつかむため、自分の選んだ道を歩み続けていこう。