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音楽、メディア、エンターテインメントビジネスを担当。

Photo by: Dana Edelson/NBC/NBCU Photo Bank via Getty Images

先週末、テキサスの田舎町で感謝祭のディナーを楽しんでいると、見知らぬ人にこう問いかけられた。「アデルっていうのは一体何者なんだ?」

恐らくその人は、私の周囲でこの英国の歌姫の存在を知らない最後の一人だ。アデルのニューアルバム『25』は発売1週間で338万枚のセールスを記録。不振にあえぐ米国の音楽業界で、彼女はたった一人で米国の全アルバム売上の44%をその週に稼ぎだした。それ以前の最高記録は2000年のイン・シンク(ジャスティン・ティンバーレイクらが所属)のアルバム「No Strings Attached」の初週242万枚だった。アデルはその記録を週の前半で塗り替えたのだ。

この15年間で音楽業界は大きく様変わりした。米国のアルバムセールスは2000年当時に7億8500万枚。その年は51枚のプラチナアルバム(売上100万枚以上)が存在した。その後、売上は急激に低下し、2014年には2億5700万枚となった。近年ではストリーミングの売上も計上されるようになったが、それでも約15年間で約3分の1まで市場は縮小したのだ。

そんな逆風下でアデルは何故ここまでの成功を収めたのだろうか。1999年のようにアルバムを売ったというだけでなく、2000年の記録を吹き飛ばすような大成功を収めた理由はどこにあるのか。

筆者は何人もの業界関係者に取材を重ね、その原因を探ろうとした。タイミングが良かったという人もいれば、彼女の歌の巧さや飾らない態度が優れているとした人もいた。しかし、誰一人として明確な理由を言える人は居ない。

米国の音楽業界で25年以上のキャリアを持つ弁護士、バーニー・レンスリック氏は「これはマーケティングの結果なんかでは無い。才能の問題だ」と述べた。

アデルの前回のアルバム「21」のリリースから5年が経過した。2012年のグラミー賞で彼女は6部門を受賞する快挙を成し遂げた。当時、フォーブスの取材に答えた彼女は「そんなに時間をかけずに、新しいアルバムをリリースしたい」と述べていたが、予想を上回る時間がかかった。

マルーン5などを育てた新興音楽出版社、ZinePakのブリタニー・ホダックは次のように述べた。
「数年という時間をかけたことにより、『25』のリリースは特別なものになった。露出を抑えたことでファンの間に飢餓感が生まれ、それがセールスにつながったんだ」

アデルのファンは複数の世代にまたがっている。彼女の音楽はイージー・リスニングにもカテゴライズできるし、子供たちにも受けるポップスだ。アルバムの発売が米国最大のショッピングシーズンである、サンクスギビングに重なったことも成功の要因だ。『25』はストリーミングで配信されず、CDを買うか、有料ダウンロードで入手するしかないことで、ギフト需要も高まった。

マーケティングに関する著作『ブロックバスター』で知られるハーバード・ビジネススクールのアニータ・エルバースは、“テント・ポール効果”という言葉で『25』の大ヒットを説明する。近年のエンターテインメント業界では、ヒットが確実な作品に、集中的にマーケティング費用を投下する。これにより、一部の売れ筋に人気が集中するようになった。映画で言えば、『アイアンマン』や『アベンジャーズ』がこの例だという。

近年のアメリカには、みんなが話題にする映画やスポーツの試合は、なんとしてでも見ないといけないような空気もある。そんな背景も『25』のヒットと関わりがあるのかもれない。

と、ここまで、もっともらしい説明を羅列してみたが、それでもなお、これほどまでの大ヒットが生まれた理由を説明しきれてはいない。恐らく一世代に一度だけ生まれるような未知の要因、誰も正確には言い当てることの出来ない、不思議な空気をアデルの音楽は持っているのだ。

「今回の大ヒットは何よりも、アデルというアーティストの偉大さに起因している。時代を問わず受け入れられる音楽性の高さ、素晴らしい楽曲、魅惑に満ちた歌声。それらがすべて結実した結果です」

フォーブスが音楽業界の「30アンダー30(30歳以下の30人)」に選出したコントラ・レコードのウィル・グリッジスはそう説明した。
「音楽業界にこれほどの大ヒットを生むための公式なんて、存在しません」と彼は語った。

翻訳編集=上田裕資

 

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