一般的な認識とは異なり、厳密に言うと、オランダでは大麻は合法ではない。政府は大麻を含む、いわゆる「ソフトドラッグ」に対して寛容な政策をとっているに過ぎないのだ。
現行の方針では、5g以下の大麻を所持する個人は刑事責任や行政責任を問われない。これによりオランダでは1970年代以降、全国各地に「コーヒーショップ」と呼ばれる大麻販売店が誕生した。こうした店では客は大麻製品を注文し、ノンアルコール飲料やスナック菓子とともに店内で消費したり、持ち帰ったりすることができる。オランダには現在、102の自治体に約570軒のコーヒーショップがある。
しかし、合法化への政策転換を目指すオランダは、合法大麻の販売を試験することになった。5つの段階からなる実証実験はこのほど、初期段階に入った。これに伴い、ブレダにあるコーヒーショップ「デバロン」は、国内で生産された大麻の合法的な販売を開始した。オランダの従来のコーヒーショップで現在販売されている大麻は、規制されていない供給源から提供されている。
ティルブルフのテオ・ウェテリンフス市長は記者発表で、今回の動きを「歴史的な」出来事と表現。「私は何年もの間、寛容政策は破綻していると言い続けてきたが、本日、ようやく合法化への一歩を踏み出した。この望ましくない寛容な状況を終わらせるために」と評価した。
初期段階では、実証実験に参加するコーヒーショップは、規制対象商品と許容商品の両方を提供することができる。だが、生産が許可されているのは3つの生産者のみで、各コーヒーショップの在庫は最大500gまでとされているため、規制対象の大麻の入手は限られている。
この初期段階は、約半年間続けられる。この段階が終わると、すべての参加自治体が移行段階に入る。移行段階は、参加するすべてのコーヒーショップの需要を完全かつ確実に満たすのに十分な量と質、また多様性のある地元産大麻が確保された時点で開始される。さらに、閉鎖的なサプライチェーン(供給網)の条件を満たさなければならない。
次の実験段階は4年間の予定で、移行段階に入った数週間後に開始される。この期間中、参加自治体のコーヒーショップは、規制対象商品を独占的に顧客に販売できる。3つの合法的な生産者によって栽培された製品は、専用の追跡システムによって種子から販売単位まで監視される。これら生産者は、大麻をコーヒーショップに安全に輸送する措置を取る必要がある。
ティルブルフとブレダは、合法大麻販売の実証実験に最初に参加する2つの自治体だ。このほかに8つの自治体が、それぞれの管轄区域内で実証実験を開始するための申請書を提出している。
実験の最終目標は、現行の大麻容認政策を修正する可能性を探ることだ。生産者がコーヒーショップに品質管理され、非犯罪化された大麻を供給することが可能かどうかを調査することを目的としている。この場合の非犯罪化とは、実験内での生産、流通、販売に対する罰則を撤廃するための法整備を意味する。政府はさらに、実証実験に参加した自治体への影響を分析しようとしている。
欧州で同様の実証実験を立ち上げているのはオランダだけではない。スイスは欧州連合(EU)加盟国ではないが、国内での合法化と成人用大麻の販売がもたらす影響を評価するためにこの方式を採用。すでに複数の都市で販売を実験している。個人使用の大麻が来年合法化される見込みのドイツも、大麻に関する新政策の第二の柱として、個人使用の合法化に続いて独自の大麻販売の実証実験を開始する予定だ。
(forbes.com 原文)