CONTRIBUTOR

伊藤 隆敏

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政策研究大学院大学教授、コロンビア大学教授。一橋大学経済学部卒業、ハーバード大学経済学博士(Ph.D取得)。1991年一橋大学教授、2002年~14年東京大学教授。近著に『日本財政「最後の選択」』(日本経済新聞出版社刊)。

  • 憲法改正議論の「切り札」とは

    2012年12月に誕生した第二次安倍政権は、もうすぐ7年目を終えようとしている。19年7月の参議院選挙でも勝利し、衆議院を解散しなければ、21年の自民党総裁選、衆議院の任期満了選挙まで、選挙はない。あと2年、政策に集中できるはずだ。総理の任期の最長記録を見てみよう。複数回の総理在任の日数を合計する「 ...

  • 米中が対立するなか、日本は自由貿易の旗手になれ

    2019年の世界経済には暗雲が漂っている。何といっても、最大のリスクは米中貿易戦争である。トランプ米大統領は、二国間貿易赤字が巨額に上ることから、中国からのハイテク製品を中心として、3回にわけて関税を引き上げてきた。これに対して中国も、アメリカの農産品を中心に報復関税を課してきた。8月に入り、トラン ...

  • 「公平性」から考える、大学入試制度変更の問題点とは

    2020年度(21年1月実施)の入試から、大学入試制度が変更になる予定だ。現在のセンター試験が廃止され、大学入学共通テストとなる。次の2点が大きな変更である。第一に、英語では4技能(読む、聞く、話す、書く)を評価するようにする。そのため、会話の力や作文力を試すため、スピーキングや筆記のセクションを含 ...

  • 「ESG投資」は名ばかりか その問題点を考える

    「ESG投資」に関心を持つ企業経営、資産運用、年金基金が多くなってきた。ESGとは、Environment、Social and Governanceの頭文字をとったもので、「環境、社会、企業統治」と訳される。ESGというだけでは企業経営をどう変えたらよいのかわからないという経営者、資産運用先の選定 ...

  • 「終身雇用を守れない」発言の経団連への提言

    経団連の中西宏明会長が、新卒学生の通年採用を拡大することで大学側と合意する一方、「企業は従業員を一生雇い続ける保証書を持っているわけではない」と発言して(4月22日)大きな話題となっている。終身雇用を前提とした採用は難しい、あるいは雇用を守るために事業継続をすることはできない、という意味で、「終身雇 ...

  • 日米の大学入試スキャンダル 「多様性」確保の内情

    日米で大学入試のスキャンダルがマスコミをにぎわしている。アメリカではヘッジファンドのオーナー、有名な女優などが、子供を有名大学に入学させるために巨額の賄賂を使ったというものである。この賄賂は、まず入試コンサルタントに支払われ、それが、大学のサッカーコーチなど体育会系コーチに渡り、富裕層の子供たちがス ...

  • 外国人観光客を増やした決断 羽田空港の国際化に鍵がある

    訪日外国人観光客(いわゆるインバウンド観光客)の増加が止まらない。2007〜12年まで800万人台で足踏みしていた訪日外国人数は、13年に1000万人台を超え、2年で倍増し、15年には約2000万人、18年には3000万人を超えた。18年中の訪日外国人は旅行中に一人あたり15.3万円消費して、全員で ...

  • 財務省作成のQ&Aは102項目も。やっぱりやめよう、軽減税率

    2019年10月1日から消費税率が8%から10%に引き上げられる。これに伴い、食品の税率が8%に据え置かれる「軽減税率」が導入される。軽減税率を推進したのは、一部の政治家だが、その理由は低所得層にとっては、食品の全消費財にしめる購入割合が高い(エンゲルの法則)ので、食品への課税を軽減することは低所得 ...

  • 東京金融市場は柔軟な発想で「10連休」を避けよ

    2019年1月3日早朝、ドル円相場が大きく動いた。109円台で推移していたドル円は、一気に104円台まで、5円近くも急騰した。すぐに、107円台に戻したものの数日後も109円には戻っていない。一時は急激な円高に、おとそ気分も吹っ飛んだ投資家も多かったのではないか。原因については、(1)米アップルの業 ...

  • 日米欧で瓦解する「中央銀行の独立性」

    中央銀行の「独立性」とは、政府(大統領、首相、財務大臣など)が、中央銀行の金融政策(とくに金利の水準や引き上げ、引き下げ)について「圧力」をかけないことを言う。「圧力」とは、たとえば金利調節について意見の異なる中央銀行総裁を罷免すると脅すことはもちろん、金利の上げ下げについて発言することも含まれる、 ...

  • ゴーン前会長の逮捕 日産、ルノーとフランス政府の関係はどうなるのか?

    2018年11月19日、カルロス・ゴーン日産自動車会長(当時)が、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)容疑で逮捕された。ルノー・日産・三菱自動車アライアンスの要の位置にいたゴーン元日産会長の突然の退場で、このアライアンスの行方が注目される。 日産は、1980年代のバブル景気時代には高い技術 ...

  • 大学入試の「公平性と多様性」

    日米で、大学の合否判定の問題が議論されている。問題の本質はかなり異なるのだが、政府も巻き込む問題になっており、主要メディアが取り上げていることから、考えてみることにする。文部科学省局長が、文部科学省からの補助金で便宜を図る見返りに、東京医科大学に息子を不正入学させてもらったという、受託収賄事件で7月 ...

  • 失業率2.4% 高圧経済から考える、日米の今

    日米ともに、実体経済がきわめて好調。しかし、インフレ率はなかなか上昇しないのは、一体なぜなのか。イエレン前FRB議長考案の「仮説」から紐解く。3月2日に発表された2018年1月の日本の失業率(季節調整値)は、2.4%(前月比0.3ポイント低下)。図1で示しているように、この水準は、バブル期末期の19 ...

  • 政府が春闘で目指す「3%の賃上げ」は合理的か?

    政府が春闘で産業界に要請する「3%の賃上げ」。この動きの背景を読み解くことを入り口に、「労働者の生産性」に着目して、本来あるべき賃上げの理想形を考える。安倍政権は、春闘における賃上げ率が3%になるように、経団連などに働きかけている。これは、インフレ率2%を達成してデフレ脱却を確実なものにするためには ...

  • 質の視点が欠落した「大学無償化」の不毛さ

    昨年末に閣議決定された「高等教育の無償化」。この政策は、大学の魅力を高める発想に欠けると指摘する伊藤隆敏氏が、改めて日本の大学が目指すべき「理想像」を考える。今回取り上げるのは、2017年12月8日に閣議決定された「新しい経済政策パッケージについて」、第2章「人づくり革命」の中の「高等教育の無償化」 ...

  • 幼児教育無償化は、「人づくり革命」にしてはインパクト不足

    安倍内閣の掲げる「人づくり革命」の一環として、検討が進む「幼児教育の無償化」。少子化や働き方といった国家レベルの課題への画期的な一手となるのか。その意義を問う。昨年10月に行われた総選挙では、安倍晋三総理が、争点を「消費税使途の見直し」と設定した。2019年10月に予定されている8%から10%への消 ...

  • 生産性を高められない日本の「盲点」

    相次いで発表されたメガバンクの人員削減。少人数で、品質を保つには、生産性の向上が欠かせない。フィンテック先進国・アメリカを例に、「生産性革命」の本質を問う。銀行業界の人員削減計画が話題だ。10月28日、みずほFGが、今後10年程度で、1.9万人の人員削減を計画していると発表した。6万人規模から4万人 ...

  • 「大学無償化」で、世界で戦える人材はつくれるのか

    文部科学省の天下り問題、加計学園問題、大学教育無償化……相次ぐ行政・政治・大学をめぐる問題が覆い隠す、実践すべき「真の大学改革」とは。今年は例年になく大学や教育関係の話題が多い。昨年暮れから報道されていた文部科学省の違法天下り(再就職)斡旋疑惑から、1月に文科省前川喜平事 ...

  • インフレ目標達成に「財政政策」は必要か?

    成長率でみても、失業率でみても、日本のマクロ経済状況は悪くない。ただ、インフレ率0%近くで、2%のインフレ目標達成は見えてこない。内閣府が3月8日発表した2016年10〜12月期における成長率(対前期比、年率換算)の第2次速報(改定値)は、1.2%。16年を通じて、1.2〜2.2%のプラス成長を継続 ...

  • 東芝に見る「海外進出における企業統治」の教訓

    “東芝の不適切会計”とその後の混乱は必ずしも対岸の火事ではない。日本企業は、海外進出における企業統治という観点から考える必要がある。東芝がアメリカ原子力事業関連の巨額損失を抱えて苦境に立っている。東芝は2015年、不正会計(数年にわたるPC事業や半導体事業における利益水増発覚 ...