10月25日、米ラスベガスでフィンテック(金融テクノロジー)に関するカンファレンス「Money 20/20」が開催。モバイル決済の未来についての議論が交わされた。大手金融機関のほか、フェイスブックやペイパル、グーグル、ウーバーらの幹部、約1万人が集まり、アップルペイが話題にのぼることも多かった。
モバイル決済の分野ではサムスン、グーグルがアップルと同様のサービスの提供を開始しているほか、米金融大手のJPモルガン・チェースも同カンファレンスで28日、チェースペイを発表した。
アップルペイは、モバイル決済の同分野を先導する存在として一目置かれている。しかし、本当に普及するのだろうか?
調査会社eMarketerのブライアン・イエーガーは、モバイル決済の利用は2016年に大幅に拡大。サービスを提供する企業の売上高は大きく伸び、それは主にアップルペイのブレイクを意味することになると主張した。
全ての人が、モバイル決済が来年、急速に拡大すると確信しているわけではない。だが、アナリストの大多数は、この決済方式が利用される割合が大幅に増すとの見方で一致している。
消費者は強化されたセキュリティーや、よりカスタマイズされ、便利になったサービスに飛びつき、一方で企業側は、モバイル決済の採用によって実施可能となるロイヤリティープログラムなどを通じて購買率(転換率)を引き上げられるというのだ。
しかし、消費者の多くがアップルペイを知っており、試してみたいと考えていることが多数の調査で明らかになっているものの、現時点では消費者は、実際の利用や、支払い方法に占めるモバイル決済の割合を高めることに二の足を踏んでいる。
決済方法として浸透しない大きな理由の一つは、アップル顧客のうち、スマートフォンでこのサービスを利用できるのが今のところ、iPhone 6sの利用者に限られているということだ。アクセンチュア・ペイメントサービスのロバート・フリン社長は同カンファレンスで27日、モバイル決済は「現金やクレジットカード、デビットカードを上回る利便性を持たなければならない」と指摘した。
アクセンチュアの最近の調査によると、消費者が選ぶ支払方法は67%が現金、59%がデビットカード、50%がクレジットカードとなっており、アップルペイの利用者は8%にとどまる。また、フェニックス・マーケティング・インターナショナルの調査では、3,000人のクレジットカード利用者の中でアップルペイを利用しているのは14%だった。
米小売企業が組織したコンソーシアム、MCXの立ち上げを主導したベストバイは先月から、アップルペイを採用した。MCXは本来、アップルペイに対抗するモバイル決済方式を模索する団体だった。
ベストバイの金融サービス部門のマーク・ウィリアムズ社長は、「アップルペイは圧倒的に世界を率いることができる何かを持って世に出された。アップルペイは今後、大躍進を遂げるだろう」とも述べている。
このほか、今年第4四半期のiPhone(主にiPhone 6)の購入者が4,800万人に上る見通しであることも、アップルペイの利用拡大の可能性を示している。