クリントン夫妻はビル・クリントンが米国大統領を退いた2001年以降、15年間で2億3,000ドル(約275億円)を稼いだ。フォーブスの試算によると夫、ビルの講演料収入の総計は約1億ドル(約120億円)。執筆活動による収入が3800万ドル(約46億円)。コンサルティング業からの収入が4200万ドル(約50億円)にのぼる。
2度にわたる連載の後編では、ヒラリー・クリントンの収入に光を当ててみた。
上院議員、国務長官時代のヒラリー・クリントンはそれほど高額ではないサラリーを受け取りながら、執筆活動で副収入を得ていた。2003年に上梓したベストセラー『リビング・ヒストリー』の印税をはじめ、2001年から2007年まで毎年平均130万ドル(約1億5,540万円)の収入を執筆によって稼いでいる。
ヒラリーが本格的に稼ぎ出すのは2013年に国務長官を退いた後だ。
2013年4月18日、ヒラリーは夫が12年前に講演を行ったモルガン・スタンレーで最初の講演を行い、22万5,000ドルの報酬を受け取った。その後も米国とカナダを中心に各地で講演活動を続け、2013年末までに900万ドル(約10億7,5600万円)を稼いだ。講演料の最低ラインは22万5,000ドルだった。
ヒラリーは2014年も精力的に講演を行い、同年の夫ビルの講演収入800万ドル(約9億5,600万円)を上回る900万ドルを稼いでいる。また2014年、ビルはLaureateとGEMS Educationのコンサルタントとして600万ドル(約7億1,700万円)を稼ぎ、ヒラリーは執筆活動で500万ドル(約5億9,750万円)を稼いでいる。これらを合わせた夫妻の2014年の稼ぎは2,800万ドル(約33億4,600万円)。JPモルガン、アップル、ウォルマートといった全米屈指の大企業のCEOの年収よりも高い。
クリントン夫妻の納税申告書によると、2001年から2014年までに二人が稼いだ総額は2億2,900万ドル(約273億7,000万円)。2015年の額はまだ公開されていないが、ヒラリーが今年前半に公開した資産情報によると、5月14日までの夫婦の講演収入は500万ドル(約5億9,750万円)だった。夫婦の2001年以降の総収入は既に2億3,000ドル(約274億9,000万円)を超えたことになる。
大企業のCEOよりも稼いでいるクリントン夫妻だが、フォーブスの長者番付に載るようなビジネス界のビリオネアとは大きく異なる点がある。それはビリオネアの多くが複数の企業の株を運用して資産を増やしているのに対し、夫妻はキャッシュで収入を得ているという違いだ。
ビリオネアたちの純資産はクリントン夫妻の純資産をはるかに上回るが、すぐに現金化できる資産はクリントン夫妻よりも少ない。クリントン夫妻の流動資産は選挙活動資金になる。ヒラリーは2008年の大統領選で自身のキャンペーンに1,320万ドル(約15億7,700万円)を融資した。その後、選挙資金が本人に返済されたかどうかは不明である。
クリントン夫妻の金の出入りには不透明な部分が多い。フォーブスが集めた資料から推計すると夫婦の純資産は4,500万ドル(約50億7,800万円)である。納税申告書や不動産登記によると、2001年から2014年までに夫妻は9,500万ドルを納税、2,200万ドルを寄付しており、2軒の家の資産価値は合計500万ドルとある。収入総額2億3,000ドルからこれらの支出を差し引くと1億2,500万ドル(約149億4,000万円)。現在保有する資産が4,500万ドルだとして、残りの5,000万ドル(約59億7,500万円)は何に使われたのか?
副大統領ジョー・バイデンの経理担当者であるウォルター・デイルは、「(大統領選立候補者のヒラリーは)一家が保有するすべての資産を公表する義務があるのにおかしな話だ」と話す。ひとつ確かなのは、夫妻にとってワシントンDCの豪邸(285万ドル)の購入はたいした出費ではなかったということだ。
270億円を稼いだヒラリー・クリントン夫妻、「富の歴史」[Part 1/2]