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世界37カ国、700万人が愛読する経済誌の日本版

Kritchanut / Shutterstock

ここ2年間、政府が音頭をとって産業界に賃上げを求めている。
その背景を経済理論から読み解くと現実が見えてくる。


「¥907 vs $15」

ニューヨーク(NY)州の賃金審議会は5月、NY市のファストフード業界の従業員の最低賃金を2018年までに段階的に15ドル(1ドル=125円換算で約1,875円)に引き上げるという勧告を行った。15年末に10.50ドル、16年末に12ドル、17年末に13.50ドル、18年末に15ドルという予定だ。パブリック・コメントなどの手続きはあるものの、8月中に決定、年末に第1回の賃上げが実現する可能性が高い。
 
NY州の(すべての業種の)最低賃金は、現在8.75ドル。15年末が9.00ドル(約1,125円)になることが決まっている。ファストフード業界だけに適用する最低賃金の特異さが際立っている。それはなぜだろうか―。
 
NY州賃金審議会報告書には、意外な説明が並んでいる。ファストフードの従業員が「生活保護などの公的支援を受けている」「健康保険にも加入していない」ということが重要なポイントとなっている点だ。

いわゆる、ワーキング・プアの典型的な職種だ。さらに、ファストフードのチェーン店はしっかり利益を出している、という記述もある。つまり、利益を出している会社がもっと賃金を引き上げれば、公的補助の額が減る、という期待もあるのではないか。
 
とはいえ、賃金上昇で採算が合わなくなり、店舗閉鎖や雇用カットが起きるであろうことは容易に想像がつく。となると、これまで生活保護から這い上がるステップとしての役割もあったファストフード業界での雇用機会がなくなってしまい、かえって生活保護などの公的支援額が増えてしまう可能性さえある。
 
これらは、経済学者がよく行う、最低賃金引上げ反対のスタンダードな議論である。①最低賃金引上げの経済全体への効果がどの程度か、②特定の業界だけの最低賃金引上げは問題ではないのか―、労働経済学ではこうした点が、よく議論されている。

広がる日米最低賃金差

一方、東京の最低賃金は、中央最低賃金審議会が7月末、14年度888円に対して19円引上げの勧告を行い、907円(15年度)となる予定である。NYのハンバーガー店の店員は、東京の店員の2倍の生産性を上げているということだろうか。

フォーブスジャパン10月号より
フォーブスジャパン10月号より

図1では、最低賃金の推移を東京とNYで、1989年から15年にかけての時系列で比較した。東京の最低賃金を(その年の為替レートで)ドル換算したのが、黒色の線で示されている。東京の最低賃金(青線)は徐々に上昇しているものの、ドル換算にすると必ずしもそうでない。

とはいえ、概ね東京の最低賃金のドル換算した線(黒色)は、NYの最低賃金の線(オレンジ色)を上回ってきた。95年と11~12年の超円高期には、日本の賃金はアメリカの賃金の4割増し程度あった。しかしこのところの円安で、15年には日米が逆転。現在は、アメリカのほうが最低賃金は高い。

これは、07年とならび、極めて珍しい現象で、さらに、この差が今後どんどん開いていくと予想される。


※「Part2 なぜ、日本の最低賃金が安いとダメなのか」へ続く

伊藤隆敏 = 文 

 

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