「いわゆる大手ナビサイトは、使用しないですね」と語るのは、外資系コンサルタントから内定を得た学生だ。彼は大学の先輩や専門性の高い情報サイトを通じて、企業から「限定説明会」へのオファーが直接届いたという。どれも有名企業ばかりだ。彼のようにして希望の内定をもらう学生に共通するのは、「大手ナビサイトはマスな情報であり、価値がない」と見ている点だ。
一方で、大手ナビサイトに登録する学生たちは、世の「就活」の大きな流れに身を任せるタイプである。こうした学生は希望先を大手有名企業にするかどうかで選んでおり、残念ながら就職につながるケースはまれだ。
つまり、大手ナビサイトの人気企業ランキングは、実際には希望先には就職できない学生たちによる夢と現実が乖離した「儚いランキング」なのだ。
「ナビサイト離れ」は優秀な学生たちだけでなく、企業側にも見て取れる。ITを中心とした、100人近くの人事担当者が集まり、今年度の就職活動解禁日の後ろ倒し対策を話し合う機会があった。参加企業の半数以上がナビサイトの利用をやめ、残りの半数も自社の採用ページを充実させる方向にシフトしていくそうだ。
その理由は、企業がナビサイトへ登録するのは莫大なコストがかかるが、そのわりには欲しい学生は見つからないから。インターンなど、早くから有望な学生を見つめる手段は多様化しているため、ナビサイトに見切りをつけ始めたのだ。
学生と企業をつなげて一時代を築いたナビサイトは、もうその役目を終え、幻想を売っているにすぎないのかもしれない。