自社のいる業界がどのような競争をしているのか。そのことを知らずに、いたずらにビジネス書を読みあさってはいないだろうか。他の業種の競争の型も俯瞰的に眺めた上で、自社の競争の型を理解し、戦略を練ってみては。
アメリカの経営学者ジェイ・バーニーが1986年にに提示したのが「競争の型」の考えです。バーニーは企業の競争の型には3つあると述べました。
2つ目の「チェンバレン型」は、IO型よりも参入障壁は低く、複数の企業が差別化しながらそれなりに激しく競争する型です。
日本の自動車業界のように同業他社が多数いるために、切磋琢磨しながら、高品質・差別化を進めていくという状況です。
チェンバレン型の競争の型では、RBV(リソース・ベースト・ビュー)に基づく戦略が有効です。
RBVとは前述のバーニー教授が提示した考え方で、企業の競争優位に重要なのは、ポジションではなく、豊かな経営資源(リソース)にあるとする考え。つまり、自社の技術力やサービス力、人材を磨くことこそ企業の優位性を高めるという考えです。
チェンバレン型では「差別化しながら競争する」ため、差別化力の源泉となる技術力、サービス力、人材力を磨くRBV的な戦略が重要になります。
そもそも日本企業はオペレーション・エクセレンス(現場力が競争の優位性にまでなっていること)が強く、したがって過去に国際的に成功してきた日本企業の多くは、このチェンバレン型の業界にいました。
以下、チェンバレン型に合う戦略が学べる書籍を紹介します。
『現場論』遠藤 功/東洋経済新報社/1,800円+税
チェンバレン型で重要なのは自社が本来持っているオペレーション・エクセレンスを再認識すること。著者は、強い企業をつくるためには経営と現場が一体化する必要があると説く。現場力の重要性を再確認できる一冊。
『ビジネスモデルエクセレンス』ビル・フィッシャー他/日経BP社/1,900円+税
現場主義を掲げる企業は多いが大企業になるほどその実践は難しい。本書では中国の家電メーカー、ハイアールの組織改革を分析。同社は権限構造を逆転させ、逆ピラミッド型の組織をつくった。究極の現場主義を知ることができる。
『トヨタ 仕事の基本大全』OJTソリューションズ/KADOKAWA/中経出版/1,600円+税
現場力といえばトヨタ。長年同社で現場経験を積み、管理職として人材育成スキルをもつ著者が社内で飛び交う口癖からトヨタ論を語る。いわゆる「トヨタ本」の中で最も明快。経営学のヒントも多く含まれる入門的一冊。