テクノロジー

2014.10.03 15:00

世界的企業のトップは、なぜ私たちのラボを訪れるのか

教会を改装した本社内でリラックスした表情を見せるジョン・ノッティンガム(左)とジョン・スパーク(右)。有名企業からの内定を断ってまで彼らが興した会社は、いまや世界屈指のイノベーション企業へと成長した。/ Photographs by Nick Fancher for Forbes Japan

教会を改装した本社内でリラックスした表情を見せるジョン・ノッティンガム(左)とジョン・スパーク(右)。有名企業からの内定を断ってまで彼らが興した会社は、いまや世界屈指のイノベーション企業へと成長した。/ Photographs by Nick Fancher for Forbes Japan



「メンロパークの魔術師」ことトーマス・エジソンやライト兄弟など世界的な発明家を輩出してきた米中西部オハイオ州。時を隔てた現代でも同州には、P&Gやネスレ、パナソニックなどの世界的企業にアイデアを授ける「魔法使いたち」がいた。

オハイオ州クリーブランドの中心部に屹立する、1931年建立の尖塔とローマ風の寺院。この建物こそが、世に数々のヒット商品を送り出している「ノッティンガム・スパーク」の本社である。
72 年の創業以来、スパークとジョン・ノッティンガム(64)は同社をアメリカ有数の企業に育て上げた。コンサルタント会社として、企業と一緒に商品やサービスを「発明」するのが彼らの仕事だ。

クリーブランド美術大学でプロダクトデザインを共に学んだスパークとノッティンガムは、卒業と同時に起業した。しかし、当時の彼らは新卒の社会人。大きな仕事の依頼など舞い込むはずもない。そこで、2 人は一風変わったビジネスモデルを「発明」した。顧客が、自社の懐ふところ事情に合わせて2つの支払い方法から選べるようにしたのだ。(中略)
ノッティンガム・スパークは、商品開発のプロセスも独特である。同社では、企画の初期段階で出てくるアイデアに対しては「3 枚のカード」を使って評価している。会議の出席者は、「いいね」「スゴい!」「興味なし」のカードで発表者のアイデアに投票するのだ。
その「スゴい!」から生まれたものに、2001 年、スタートアップ企業のドクタージョンズと共同開発した電動歯ブラシ『スピンブラッシュ』がある。アメリカでは当時、電動歯ブラシは安いものでも50ドルもしたため、利用者は歯ブラシ市場全体の1%に過ぎなかった。しかし、オモチャの開発経験も豊富なノッティンガム・スパークは、回転するペロペロキャンディをヒントに、キャンディの代わりに歯ブラシを付けて5ドルで発売することを考えた。同商品は初年度だけで1,000万個も売り上げ、P&Gに買収された。現在は数十億ドル規模の市場へと成長している。加えて、ノッティンガム・スパークは顧客に特許を申請するように強く推奨しており、スピンブラッシュの開発だけで42もの特許を取得したという。
スパークは力説する。「私たちが実践してきたオープン・イノベーションは、ヒットを瞬時に生み出す『魔法の杖』ではありません。顧客と苦楽を分かち合いながらイノベーションに取り組んでいます。これは魔法などではなく、無数の企業との仕事で証明されてきた信頼に基づく方法論なのです」

フォーブス ジャパン

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