首都圏ではインプラント歯科医院のドクター兄弟の顔入り看板をよく目にする。電車の線路脇、高速道路脇などに文字どおり「林立」しているのだが、いったいどれほどの広告料を払って、それだけ効果をあげているのか。インプラントには縁はなくとも、毎日あの兄弟の顔を見て気になっている人は多いのではないか。
eclore(エクロール)が提供するSEOサービス「ランクエスト」は、独立開業歯科医師100人とインプラント治療を受けた経験のある200人を対象に、医院の認知経路、つまり何で知ってそこを選んだのかに関する調査を実施した。そこから、広告主である歯科医と患者との間に、認知経路に関する認識にズレがあることが明らかになった。

まずは医師に、患者が自身の医院を何で知って選んだと思うかを尋ねた。もっとも多かったのがインプラント情報を提供しているポータルサイト、次に口コミ、ウェブ検索などと続いた。

患者本人に同じ質問をしたところ、歯科医の想像とは大きく異なり口コミが突出して多かった。それに、ポータルサイト、ウェブ検索と続く。医療行為を受けるわけで、それなりに料金も高いとなれば、広告よりも経験者の意見のほうが信頼されるのだろう。

両者の割合を比較すると、「その他」を除いて、口コミと看板(外観)だけが医師の想定を上回り、ほかはみな医師が思っているほどの効果はないことがわかる。とくにチラシとポスティング、MEO(Googleマップでの検索)、SNSにいたっては、患者はほとんど見ていない。インプラントを受ける人は高齢者が多いため、SNSの訴求力は低いのかもしれない。しかしランクエストは、それらのメディアには「将来的な伸びしろ」が大きいと話す。もっとも割合が多かった口コミは、「満足度の高い治療」を提供して評判を高める努力はもちろんだが、MEOやSNSを活用して効果的に拡散する工夫が求められるということだ。
口コミほどではないにせよ、たしかに看板には宣伝効果があるようだ。あのドクター兄弟は全国に300を超える看板を立てていて、その費用は1年間で2億円を超えると言われている。それで年商は18億円。街の美観を損なうという批判もあるが、たしかにインパクトは強い。ゴミになるだけのチラシよりは環境負荷が小さそうだし、看板にはそれなりの効果があるのだと再認識させられる調査結果だ。