ウクライナ軍のSAMP/T地対空ミサイルシステムが、ロシア軍機を撃墜していたことが明らかになった。フランスとイタリアが共同開発し、米国のパトリオット地対空ミサイルシステムの欧州版に当たるSAMP/Tにもっと頼らざるを得なくなるかもしれないウクライナにとって、間違いなく朗報だ。
もっとも、SAMP/Tとそのアステル(アスター)ミサイルはウクライナでも、欧州などのほかの国でも数が足りていない。
ウクライナ空軍司令部コミュニケーション局のユーリー・イフナト局長が最近のイベントで「SAMP/Tはスーシュカ(スホーイ設計局の航空機の愛称)を撃墜しました」と認めた。SAMP/Tが撃墜した目標はほかにもあるとし、「(撃墜が)確認された航空機があります」とも語った。
レーダーや発射機などで構成される5億ドル(約740億円)程度のSAMP/Tを、ウクライナはこれまでにフランスとイタリアから計2基受け取っている。SAMP/Tは最大150km離れた航空機やミサイルなどを迎撃可能で、西側ではパトリオットに代わり得る唯一の防空システムだ。
ウクライナは米国、ドイツ、ルーマニア、オランダからパトリオットを少なくとも計6基受け取っている。しかし、ロシアに同調する姿勢を強めるドナルド・トランプ米政権が地政学的カオスを引き起こすなか、ウクライナはロシア軍の航空機やミサイルへの対処でバックアップの計画が死活的に必要になっている。
ウクライナが始めたのではない戦争をウクライナに終わらせるよう要求しているトランプは2月末ごろ、ウクライナへの米国の軍事援助を停止した。実行が困難な停戦枠組みにウクライナが同意したあとにようやく、米政権は援助再開に応じた。この停戦枠組みにはロシアも同意する必要があるが、それを得るのは不可能かもしれない。
トランプ政権はカナダやデンマーク自治領グリーンランドに対し、米国の一部になるよう脅してもいる。2月、欧州に米国からの戦略的な「自立」の達成をあらためて呼びかけたドイツのフリードリヒ・メルツ次期首相候補には、先見の明があった。
パトリオットが使えなくなれば、ウクライナはロシアによる空からの攻撃に対する防衛の大きな部分を、少なくとも一時的には失うおそれがある。