大規模災害が頻発し、事業継続計画(BCP)の策定が中小企業の間でも進んでいる。しかし、策定はしたものの実際の危機的状況においてそれが機能するかどうかは別問題だ。BCPを本当に役立たせるためには、乗り越えなければならない課題がある。その最大の問題は「意識」だ。

リスクマネジメントコンサルティングを提供するニュートン・コンサルティングは、BCPを策定している企業に所属する1000人を対象に、BCPの現状に関する調査を実施した。それによれば、自社のBCPが災害時に機能すると思っている人は、なんと半数以下だった。部門別で見れば、BCPを担当する部署では機能すると答えた人が7割近く高かったのは当然として、経営層は約6割にとどまる。さらに、実際にBCPに従って業務を遂行することになる事業部門、つまり現場の人々の回答は45パーセントと非常に低かった。

そこで、BCPが機能すると思う人、しないと思う人のそれぞれにBCPに関する課題を聞いた。機能しないと思う人が感じる課題の1位は「経営陣の取り組み意識が低い」というものだった。2位は「社員の取り組み意識が低い」、3位は「業務が属人化しておりその人がいなくなると機能しない」というものだ。

機能すると思う人が感じる課題の1位は「代替生産・開発拠点がない」、2位は「重要なITシステムに対する代替システムがない」、3位は「代替調達先がない」となった。つまり、機能しないと思う人たちが重視する課題は人的問題であり、機能すると思う人たちが重視する課題は物的問題だ。順位では、その2つがハッキリと対照的に示された。

物的問題は、簡単ではないにせよ、対策の道筋は明確だ。しかし、経営トップの意識変革となると具体的な対策が存在せず一筋縄ではいかない。BCPを実際に機能させるために必要なものをたずねると、もっとも多い答えが「従業員への教育」。さらに「平時からのトップの危機意識」、「BCPなど直接利益を生まない活動を重要と捉える企業風土」と、ここでも人的な要素をあげる人が多い。
![有事に適切に動けるBCPとなるには何が必要だと思いますか?(全体)[複数回答]](https://images.forbesjapan.com/media/article/77583/images/editor/d91b1b9fc3107e8eac95da25af5f3b46efd25d25.jpg?w=1000)
その一方で、「定期的な対策の見直し・改善」、「現場への権限移譲」という具体的な運用面での問題もあげられた。ニュートン・コンサルティングは、「有事が起きることは稀であるが故、(BCPは)形骸化しやすく、活動を継続しないと実効性は失われていく」と指摘する。そのためには、「実効性があるBCPが評価される社会の実現」を目指して、有事に真に機能するBCPを追究する必要があると同社は話している。