自動運転化で1事故あたりの走行距離は人間の運転よりも伸びるといわれています。
また、日本では都市部における自動車の稼働率は極めて低いとされています。つまり自動車という資源を十分活用できていないのが現状です。
所有から共有という流れになり、自動運転による自動車の無人運行が増えてくると、オンデマンドで自動車を呼び出して利用するという生活スタイルが広がる可能性が出てきます。すでに都市部ではカーシェアリングサービスも普及していて、年末やゴールデンウィークの繁忙期には予約で一杯になっていることも少なくありません。
CDやDVDといった音楽・映像パッケージメディアから類推してみましょう。音楽も映像コンテンツもオンラインストリーミングで見たいときに見ることができ、しかもパッケージメディア購入と比較して、極めて安価にコンテンツを楽しめる世界。そんな変化が自動車でも起こりうると見ています。
もちろん、パッケージメディアにおいても自宅にライブラリ化して蒐集するあり方を否定するものではないですが、大半はより安価で簡便な利用方法に収斂していくでしょう。
趣味で貴重な自動車を保有する場合を除くと、多くは日常生活のために共有モビリティを活用する世界になるだろうと思います。ただし、デジタルコンテンツと異なり物理的実体を持っている自動車では、共有が自動車台数の上限で制約されるため、デジタルでできたから自動車でもそうなるという主張ではありません。
自動運転車の先に要請されることを考える
必要なときに呼び出して目的地まで行くことのできる自動運転車が普及した将来のモビリティ社会を想像してみましょう。そのころには今の日本の人口構成は今よりもはるかにシニア層の比率が高くなっています。今から25年後の2050年の65歳以上人口の比率は2020年の28.6%から37.1%になるとされています。つまり4割近い市民が65歳以上です。その前に現在の状況の一つを紹介します。先日、東京都内のあるホテルに打ち合わせで訪問した際、ちょうどホテル入口にタクシーが止まり、家族の方が総出でお年寄りの降車を手伝っておられました。最近のタクシー車両は比較的天井が高く、スライドドアで乗降がしやすいものの、それでもご家族の手助けなくては乗降ができない方のようでした。
タクシー業界は運転手不足から廃業となってしまう事業者も少なくなく、地方都市では多くのベテラン運転手が現役で活躍されています。2023年のタクシー企業の廃業数は過去10年で最大だったという報道もありました。日本で急速に進むシニア社会化では、今後は、2020年の総人口1億2600万人中15〜64歳の生産人口割合が59.6%であり、これを実人口にすると約7500万人。2050年では総人口1億500万人に対して、52.9%ですので、約5555万人と激減するのです。