大統領の代行を務める人も連日国会に呼び出され、公務を遂行することもままならない。通常は米国の大統領が就任すると、すぐ電話で対談したりするのだが、それをする暇もなく時間だけが過ぎている。
また、ディープシークなどの新しいAIに対処することもできないでいる。加えて飛行機事故が立て続けに起こり、経済・政治的の混乱が災いしてウォン安が続いている。
イ会長の司法リスクは終わった!?
そんななか「経済大統領」とも言える韓国最大財閥の「サムスン」の会長、李在鎔(イ・ジェヨン)氏 が「無罪」判決を受けたという報道があった。彼の容疑は、資本市場法違反や業務上背任、株式会社外部監査法違反など、多岐にわたる。発端は、二代目の李健煕(イ・ゴンヒ)会長が、生前に一人息子であるイ・ジェヨン氏にサムスングループを継がせるため、工作したことからだった。
それを当時副会長であったイ・ジェヨン氏が画策したということで、2020年9月、参与連帯という市民団体により告訴された。しかし2024年2月5日、検察の起訴後4年ぶりに行われた一審宣告では無罪を宣告された。それから1年後のこの2月3日、二審宣告でも無罪を宣告された。
工作の内容を簡単にまとめると、グループを支配するためには一定の持株が必要だが、それをグループ内の株を操作して経営継承に有利にしたことである。
現在、サムスングループを支配する構造の頂点には「統合サムスン物産」がある。グループのうち「サムスン電子」は現在の時価総額405兆ウォン(約39兆円)規模の巨大企業だ。しかし支配構造としては「サムスン生命」が筆頭株主だ。
そのサムスン生命の筆頭株主が「サムスン物産」である。そして、総合サムスン物産の持株17.33パーセントを保有し、筆頭株主であるイ・ジェヨン会長がサムスン物産とサムスン生命を通じてサムスン電子を間接支配している形態だ。
グループの頂点にある総合サムスン物産は、2015年に「第一毛織」と「サムスン物産」の合併でつくられた。サムスン物産は元々物産と建設の会社が合併されたものだったが、建設部門が主な事業だったので、毛織物の会社である第一毛織との合併は不思議な感じはあった。
ちなみに、サムスン物産はドバイのブルジュ・ハリファ、台湾の台北101、マレーシアのペトロナスツインタワーのタワー2など、超高層ビルを施工したことで有名だ。
検察側の主張としては、実態は経営権を息子に継がせるために合併させたというものだった。合併当時、イ・ジェヨン氏は第一毛織の筆頭株主であった。しかしサムスン物産の株は所持していなかった。よって、第一毛織の株を膨らませ、サムスン物産の株は意図的に下げて、不法に経営権の継承およびグループ支配力を強化させたというのだ。
たとえば、合併する当時、サムスン側が第一毛織の子会社である「サムスン・バイオロジックス」の悪材料を故意に隠したり、持ち株のないサムスン物産に対しては海外工事受注の事実を隠したりするなど、不正を犯したという。
検察はこのような過程を通じて、イ・ジェヨン氏が総合サムスン物産の筆頭株主となり、最小費用でグループを支配することができたと主張している。
しかし、昨年の一審に続き、今回の二審まで経営権不法継承疑惑に対する裁判所の判断はすべて無罪となった。
韓国は日本と同じように相続税率が高く、オーナーとしての持ち分を維持することが非常に困難とされている。そこで、企業はオーナーが亡くなり相続税が負担になったオーナー一家は相続税分だけ株で支払うことになり、その企業の筆頭株主が韓国政府になることもあった。
検察は最高裁判所への上告を検討すると発表したが、財界ではイ・ジェヨン会長の司法リスクは終わったとみている。