韓国経済界はサムスンの変化を期待
大韓商工会議所は、同会長の二審宣告の結果を受けて「サムスン物産-第一毛織合併に対する二審判決と関連し、AI・半導体分野のグローバル産業の地形が急変するなかで、企業経営の不確実性が大きく解消されると期待し、これを歓迎する」というメッセージを出した。2016年に朴槿恵元大統領が弾劾されたとき、イ・ジェヨン会長は朴大統領の不正疑惑で刑務所に入ったこともあり、政治と絡んでこの10年余りずっと司法リスクを抱えていた。
そのため正常な経営活動が難しかったといえる。だが、今回無罪となったことで、韓国の経済界ではサムスングループの変化を期待している。
昨年9月末の基準でサムスン電子の現金性資産は103兆ウォン(約10兆7000億円)を超えた。韓国企業のなかでは最大規模だ。まだまだ大きな仕事をする余力はある。
イ・ジェヨン会長が積極的に動けなかっただけに、サムスンは半導体でも遅れを取っていたが、これからは生成AI、ロボット、バイオ分野で大きく躍進すると見通されている。特にAI分野への大規模な投資が予想されている。
2月4日の午後、イ・ジェヨン会長は韓国を訪問した「オープンAI」のサム・アルトマンCEOと「ソフトバンク」グループの孫正義会長を招き、サムスン電子の瑞草社屋で三者会同した。彼らは次世代AIインフラとエコシステム構築を目指すスターゲートプロジェクトについての話を交わしたという。
このプロジェクトはオープンAIとソフトバンクとオラクルが2029年までに5000億ドル(約727兆ウォン)を投資する大規模なAIプロジェクトで、トランプ大統領のAI覇権プロジェクトとして評価されている。グローバル市場でAI主導権をめぐる米中の覇権争いなのだ。
このプロジェクトにイ・ジェヨン会長が参加できれば、米国が掲げる関税問題を避けることができるという予測もある。ただ、ソフトバンクの孫会長はこれに関し「特別なことはなく、潜在的なコラボレーションについての議論をしただけ」とインタビューに答えた。
そして、この三者会同が重要なのは、イ・ジェヨン会長の控訴審無罪宣告以後初のものだからだ。また、会同には三者だけでなく、半導体設計企業である「ARM」のルネ・ハースCEOも参加したと言われる。ディープシークなど中国AI企業の浮上に対抗するための米日韓のAI同盟に拍車がかかった状態だ。
だが、サム・アルトマンCEOは、サムスンの競合他社である「SK」グループのチェ・テウォン会長とも会同しており、サムスンだけのための韓国訪問ではなかった。
それでも、サムスングループのイ・ジェヨン会長が、足かせとなっていた司法リスクから解放され、より積極的に経済活動を行えるということが、韓国にとっては希望的な観測を生むものとなるとは思われる。