テクノロジー

2025.02.18 09:50

歩く振動で発電する環境発電、三菱電機の技術で実用化へ前進

プレスリリースより

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環境中にあふれているエネルギーを電力に変える環境発電の研究が盛んに行われているが、そのひとつに、人が歩くときの振動、そよ風、体温、携帯電話の電波など、ごくごく小さいエネルギーを収集して発電することを「エネルギーハーベスティング」と呼ぶ。発電できる電力が非常に小さいため用途が限られるが、三菱電機は従来型にくらべて出力が1万倍以上という発電モジュールを開発した。省電力型のIoT機器なら十分に作動させられるだけの電力を作り出せる。

このモジュールは電磁誘導発電方式。コイルの中で磁石を動かすと電気が発生する原理を応用している。エレキギターの弦を弾くとピックアップのコイルが電気を発生させる、あの仕組みだ。つまり、運動を電力に変換するシステムだ。
電磁誘導発電方式の床発電システムの構造図。

電磁誘導発電方式の床発電システムの構造図。


以前に三菱電機が開発した電磁誘導発電モジュールと比較して、このモジュールは同じ動きで発電できる電力がじつに1万倍以上というから驚きだ。圧電素子を床に埋め込み、人が歩くときの振動を電力に変える「床発電」の実験が各地で行われているが、三菱電機もこのモジュールを使って実験を行った。

それによると、同社が開発した圧電方式の床発電装置に比べて100倍となる200ミリワットを発生した(30センチ角の床板を1秒間に2回踏んだときの出力)。これを使うと、床を1回踏んだだけで温度センサーの温度データの無線送信が可能だった。

しかもこの床発電装置は床板と発電素子が非接触なので(エレキギターの弦とピックアップの関係)、どんなに動いても摩耗しない。圧電素子の床発電装置の場合は、素子に直接振動を加えなければならないため、いずれ劣化して壊れてしまうという課題があったが、電磁誘導発電なら劣化の心配がない。
風速3メートルで5ボルトを発生。

風速3メートルで5ボルトを発生。


なによりも、この大きな出力は画期的だ。同社の風車を使った実験の動画では、木の葉が揺れる程度の風速3メートルの風で5ボルトの電力を発生させる様子が見られる。エネルギーハーベスティングの利用範囲がぐっと広がりそうだ。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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