これは、天文学誌The Astrophysical Journalに掲載が受理されたばかりの最新論文で述べられている主張だ。論文では、高度な地球外文明の技術的な存在指標(テクノシグネチャー)を探索するためのまったく新しい方法を提唱している。
このアイデアのポイントは、未来の宇宙望遠鏡と地上望遠鏡を用いて、できれば今後10年で、地球型太陽系外惑星の大気に含まれる水蒸気の高分解能スペクトルを取得することだ。そうすれば天文学者は、地球型系外惑星の海洋における、水素に対する重水素(原子核が陽子1つと中性子1つで構成される、水素の安定同位体)の存在量の比率「重水素対水素比(D/H)」を測定できると考えられる。
論文の筆頭執筆者で、米ワシントン大学の惑星科学者デビッド・キャトリングは、シアトルにある自身のオフィスで取材に応じ、系外惑星のD/H比の測定により、この種のテクノシグネチャーを特定できる可能性があると語った。キャトリングによると、重水素の質量は水素の2倍で、これによって観測されるスペクトル信号に最大の差異が生じる。
莫大なエネルギーを生成するために、重水素をヘリウムに変える核融合を利用するのが、非常に高度な地球外技術が存在する明確な兆候だと考えられるという発想だ。地球のD/H比は、地球が属する天の川銀河(銀河系)の星間物質で測定された値の約10倍高い。
したがって、特定の地球型系外惑星の大気中のD/H比が、星間物質中に自然に見られる基準の最小値に比べて低いことが判明した場合、それは真の異常値になるだろう。
太陽系にある岩石惑星の既知のD/H比は、星間物質のD/H比よりもはるかに高いと、論文は指摘している。
遠方の地球型系外惑星の異常に低いD/H比を自然に説明できる既知の方法がないため、このテクノシグネチャー探索案は有効かもしれない。
エネルギー生産としては、水素原子を融合してヘリウムにする太陽型のプロセスよりも、重水素核融合のほうがより魅力的なのはなぜだろうか。
キャトリングによると、重水素はより反応性が高く、非常に高い温度を必要としないという物理的特性を持つからだ。水素を融合させる太陽の中心部のような温度は必要なく、それほど極端ではない条件で核融合を起こすことができるという。