高架道路によるコンクリート製の覆いと土の壁で防護された間に合わせの掩蔽壕は、ロシアが起こして3年近くたつ戦争の1300km近くにわたる戦線を常にどこでも飛び回っているウクライナ軍のドローンから、ロシア兵たちを守れるものだったのかもしれない。問題は、彼らがそこに退避するところをその一機に監視されていたことだ。ドローンの赤外線カメラは、37度前後の熱を発するロシア兵たちの姿を捉えていた。
ロシア兵らが足早に高架下に潜り込んでいってからほどなくして、ウクライナ空軍第40戦術航空旅団のMiG-29戦闘機がフランス製のAASM滑空爆弾2発をそこに向けて投下した。いずれもフィート単位(1ft=約30cm)の精度で入口に命中した。
着弾時に何人のロシア兵が陣地内に残っていたのかは不明だ。何人が生き延びたのかもわからない。ただ、数メートル先で爆発した250kgの爆弾2発の爆風によって「土製圧力釜」のようになった狭い空間で、中に押し込められた兵士らがどのような状態になったのかは一考してみる価値がある。
ロシア軍1個歩兵分隊の瞬時の無力化というのは、ウクライナもしくはロシア西部のほかの前線では大きなニュースではないかもしれないが、オレシュキでは注目に値する。ヘルソン州では昨年、激しく損耗したウクライナ海兵隊部隊がドニプロ川左岸(東岸)のクリンキ村から撤退して以来、戦闘は比較的落ち着いている。ヘルソン州ではドニプロ川がおおむね両軍の接触線を画していて、州都ヘルソン市がある右岸(西岸)側をウクライナが保持し、オレシュキなどが位置する左岸側をロシアが占領している。
クリンキをめぐる過酷な戦いのあと、ロシア軍がヘルソン州で主にやっていることは、ロシアによるこの不当な戦争の基準からしても異常に思えるほど残忍なものだ。ロシア軍はドローンや大砲でヘルソン市など対岸側のウクライナの民間人を日常的に狙い、通勤中の人や買い物に出かけた人などを攻撃している。